犬の膵炎とは
犬の膵炎は膵臓の消化酵素が過剰に出されることで膵臓が炎症を起こす病気です。
・突然何も食べなくなった
・何回も吐いている
・お腹が痛そうにうずくまっている
・元気がない
・体が熱い
といった急性症状が出る場合を急性膵炎と呼びます。
からあげを盗み食いしちゃった!など急に脂っこいものを食べた場合や、環境の変化などの疲れやストレスが原因で発症することもあります。
膵炎になると
急性膵炎は入院が必要になることも多く、重症の場合はショック症状を起こし命に関わる病気なので、普段から前述のような症状がないか体調を気にかけておくことが大切です。
人の食べ物や脂質の高い食事をとっている、血液検査で高脂血症と言われたことがある、クッシング症候群を発症していたり、ステロイドを飲んでいる場合は膵炎のリスクが高くなるので特に注意しましょう。
急性膵炎を繰り返すことで、膵臓が線維化したり、萎縮してしまい、慢性膵炎に移行する場合もあります。慢性膵炎がまたストレス等で急性症状を出すこともあります。
東洋医学では膵炎をどう捉える?
膵炎は「肝」と関係
東洋医学における五臓六腑に「膵」という概念はありません。インシュリンにより血糖値をコントロールしている膵臓の内分泌機能は「腎」、リパーゼなどの消化酵素を出す外分泌機能は「脾」の働きの中に包括されています。
しかし、膵炎において最も大事なのは「肝」です。「肝」は脾胃の働きの調節をしている臓です。膵炎はストレスなどにより「肝」の疏泄が異常をきたし、肝脾不和になることでおこります。シニアになると膵炎を起こやすくなるのは、歳をとって少なくなってきた先天の腎の気が母子関係である子の「肝」を滋養できなくなるからと考えられます。
また、先天の気である腎陽が少なくなると後天の気である脾陽が侵され、胃腸の働きが悪くなってしまうことも関係しています。
膵炎の治療と漢方薬
急性膵炎の場合は膵臓の酵素の分泌を抑制するために嘔吐が収まるまでは一時的に絶食をさせます。
嘔吐をしていたり、絶食することで脱水を起こしてしまうので点滴も合わせて行います。鍼灸治療では自律神経のバランス、「肝」と「脾」の調子を整えます。
食事がとれるようになってきたら、漢方薬も合わせて治療を行っていきます。
ストレスが深く関わっている場合は疏肝解鬱(そかんげうつ:肝気の巡りをよくしてうっ滞をとる)作用と健脾養血(けんぴようけつ:脾気を補い、血を滋養する)作用のある漢方薬を使用します。
脾気が低下している場合は補気健脾作用のある漢方薬を使用します。病名は同じ膵炎でもなぜ膵炎になってしまったのか、そのこの体質や今の状態によって使用する漢方薬は異なってきます。
食事で注意したいこと
膵炎は食事療法で発症をある程度予防できる疾患です。
脂質を抑えた食事にしていただき、油が酸化しないよう開封後はなるべく早めに食べきるようにしましょう。
また、悪質な動物性の脂肪は中性脂肪や血中コレステロールの増加につながりますので脂肪の質にも注意が必要です。
ただし、一度膵炎になったからといって極端に脂質を制限する必要はありません。血中の中性脂肪やコレステロール値が高かったり、膵臓の酵素の値が安定しない場合、膵炎を繰り返している場合は低脂肪食の方が良いでしょう。
しかし、それらの数値が正常か正常より低い位ならば脂肪分が低すぎる食事を続けることでやせてきてしまい栄養不良を起こしてしまう可能性があります。
この場合は脂質の量よりも質を良くしてあげることで予防する方が良いでしょう。
色々な病気を合わせ持っている時は
「以前から腎臓が悪く、腎臓用の処方食を食べていたら膵炎になってしまった。何を食べさせたら良いでしょうか」という質問をよくいただきます。
腎臓用フードはタンパク質を制限しているため、カロリーを補うために脂質が高くなっています。そのため食べ続けることで膵炎になってしまうことがあります。
膵炎になってしまった場合は膵炎の症状の方が急激に体調が変化し、命に関わることもあるので、低脂肪食へ切替えることをおすすめします。
低脂肪食に切り替えることでカロリーが足りなくなってしまう場合は炭水化物を少量足すと良いでしょう。
肝臓が悪い場合も基本的には腎臓病の時と同じで低脂肪、低蛋白食、炭水化物をほんの少し多めにとるようにしましょう。
食事は量と質のバランスが大事です。身体は食べ物から作られていくので質の良い物を取り入れましょう。
それではハッピードックライフ♪
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獣医師 佐々木彩子