Vol.132

水鍼とホモトキシコロジー

公開日:2021.10.23  / 最終更新日:2023.06.05
ホモトキシコロジー製剤で水鍼をうつ

ツボに注射する「水鍼」

キュティア老犬クリニックでは鍼灸治療の一つとして、ツボに鍼をさして液剤を入れる水鍼(みずばり/すいしん)という手法を取り入れています。

老化やヘルニアなどによる後肢の麻痺には、神経の修復に役立つビタミンB剤を足腰に働きかけるツボに注射をします。ツボに薬剤が入ることで、持続的にツボ刺激もされますし、ピンポイントでその薬剤の効果が発揮されます。

プラセンタ注射も非常によく使うのですが、同じ薬剤でもその子の症状によって打つツボは変わってきます。腎の疲れによる足腰の弱り、腰痛なら腎のツボに、気圧変動によって肝が疲れているなら肝のツボ、脾胃の疲れから食欲が出ない時は胃腸に働きかけるツボ。というように症状に合わせて打つツボを使い分けています。

ホモトキシコロジーも併用

また水鍼にはホモトキシコロジーの考えをもとに作られたドイツ製の抗ホモトキシン薬も取り入れています。ホモトキシコロジーって何ですか?と患者さんに質問されることも多いのですが、HOMO-TOXIC-OLOGY=Human-Toxin-Study全ての病気は外因性、内因性のホモトキシン(毒素)によって引き起こされているという概念です。

ホモトキシンとは人間に不健康を引き起こす物質(化学物質、食物など)および非物質的要因(ストレス、環境など)の全てを指します。病気によって引き起こされる症状は、ホモトキシンを排除するために起こっている生体反応であり、病気の治療とは体が行っているホモトキシンの排除を手助けすることであるというのが基本的な考え方です。

更なる毒素の摂取を極力避け、細胞や臓器機能の改善をし、解毒・排泄機能を適正化していくのが目標です。体が行っている反応を手助けしてあげるものなので、高齢動物にも使いやすく負担の少ない治療になります。

ステロイドの使用は要注意

毒素になりやすい代表的なお薬にステロイドがあります。多くの副作用があることはよく知られていますが、ホモトキシコロジーの観点からも安易に使うことは避けた方が良い薬と言えます。

アレルギー反応や炎症反応は毒素を排泄するために生体が行っている反応なのに、ステロイドはそれを抑えてしまうという点であまり長期使用すると解毒機能が正常に働かなくなってしまい、かえって病気を長期化してしまいます。

とはいえ、ステロイドがないと体を維持できない免疫の病気もあります。とりあえず炎症があるから使ってみよう、食欲がないから飲ませてみようといった使い方はなるべく避けた方がいいということです。

ホモトキシコロジーの薬剤

効果的な水鍼とホモトキシコロジーの組合わせ

ホモトキシコロジーの注射製剤の中でも特によく使うのが腎不全に有効な薬剤です。使用した多くの症例で血液検査の数値が下がっています。また数値が大きく改善されない場合でも吐き気が治まったり、食欲が回復したりしています。

皮下注射をして投与する場合、多くの病院では3種類の薬剤を週2回程度注射しています。鍼灸後にツボに注射をする水鍼の場合は1~2種類の薬剤でよく、使用する薬剤の量も10分の1で同等の効果を得ることができます。また注射の間隔も2週に1回程度で済むので、身体にとっても経済的にも負担が少なくなります。

腎不全の他にも、肝臓の解毒を助けるものや、てんかん発作の予防になるもの、認知症による諸症状を緩和するもの、血液循環をよくするもの、皮膚病によいものなど様々あります。 このように水鍼は鍼灸治療と組み合わせることで非常に有効な治療法となります。何か気になる症状があれば気軽にご相談ください。

それではハッピードッグライフ♪

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キュティア老犬クリニック
  獣医師 佐々木彩子
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