ヘルニアやDMで麻痺がおこってしまった時に使用するのはもちろんなのですが、2018年2月のコラムでもご紹介したように、筋肉量が低下してきたり、脳神経疾患で平衡を保つことが苦手になってきたりした際の「歩行補助器具」として早期から利用を開始することで、とても快適なシニア犬ライフを送れるようになるのです。
今回は、車いすで生活に彩を取り戻した、シーズーとダックスのMIX犬、小太郎くんをご紹介します。
車いすで負の連鎖を断ち切る
お兄ちゃん犬の桃太郎君のご縁で、時折キュティアでの鍼灸メンテナンスを行っていた小太郎君。コロナの影響などでなかなか来院できないながらも穏やかに過ごしていたのですが、2020年11月末、突然元気がなくなり食欲も低下したので近医を受診したところ、かなり進行した状態の腎不全と診断されました。そこでキュティアへの通院を再開することに。
毎日の皮下点滴などで血液検査の数値は改善したものの食欲が戻らず、シリンジで蜂蜜やヨーグルトをなめるだけになってしまいました。そして、しっかりとたんぱく質が取れない日が続いたことで、体幹やお尻の筋肉が落ちて足に力がはいらなくなってしまった小太郎君。大好きなお散歩でも少し歩くと疲れてしまい、お家では寝て過ごすようになってしまいました。
ただでさえ胃腸の動きが低下し食欲がわかない状態に、楽しみもなくゴロゴロしている状態が加わってはより一層食欲がなくなる悪循環に陥ってしまいます。そこで、そんな負の循環を断ち切るべく、少しでも快適にお散歩時間を楽しめるよう車いすの利用をお勧めしたのでした。
体幹を支えてくれるから
4足歩行ではお腹にうまく力が入らないと、お尻や腰を上げるために、後ろ足を突っ張った状態にすることで何とか支えなければならなくなってしまいます。そうなると、膝や股関節を動かして前進することができず、前足で無理やり身体全体を引きずって歩かなければなりません。
車いすは、そのお腹の「体幹を支える」補助をしてくれるので、後ろ足を突っ張る必要がなくなり、膝や股関節をしっかり動かして楽に、快適に歩くことができるようになるのです。また、自分の思い描くように動けることで、わんちゃんも自信を取り戻すきっかけになることも少なくありません。
生活に彩、筋力もアップ!
小太郎君も、車いすでのお散歩を開始した日の夜から、自分で立ち上がってトイレに行くようになりました。そして、だんだん車いすの操作のコツを掴み、お部屋の中でも使いこなせるようになってきたころには、自分から玄関のドアの前でお散歩を待つようになったそうです。
散歩中は、まるで小さな子供がゴーカートを楽しむように元気に小走りまでするようになった小太郎くん。夕方のお散歩時間には、近所の小学生たちに「がんばれ~」と声をかけてもらって得意満面♪ 自信と目の輝きを取り戻すことができたのでした。生活に彩を取り戻せたことで、コクコクとスムージーを飲むようになり、家の中ではふらつくことなく自力で自由に歩き回って過ごせるまで筋力も回復したのでした。
自信を取り戻す
小太郎君に限らず、わんちゃんたちはお出かけや、お家で飼い主さんのそばをくっついて歩くのが大好きです。車いすで自分の思い描く通りに移動できるようになり、しっかりと立って周りを見回せるようになることで生活の快適度が増してきます。
そして顔つきが明るくなったり、自信を取り戻すことができるようになるコは少なくありません。ふらついたり、よろけてたおれながらもなんとか歩いている…という状態なら、一度車いすを試してみてはいかがでしょうか?
それではハッピードッグライフ♪
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獣医師 横山恵理