東洋医学に興味のない方でも、五臓六腑(ごぞうろっぷ)という言葉は耳にされたことはあると思います。
これは、
身体を生命活動を行う一個体としてとらえ
各臓腑や器官がどのように活動を行い
連携を取り合っているかを
東洋医学の視点で考えた「臓象論(ぞうしょうろん)」による身体の内臓の分類を示したものです。
名在りて形なき臓器「三焦」
具体的には、肝・心・脾・肺・腎の5つの実質臓器と、小腸・胆・胃・大腸・膀胱・三焦の6つの中空臓器のことを指します。これに脳・髄・骨・脉・子宮といった奇譚の腑が加わり身体が構成されているとされています。
他の臓器は西洋医学でもなじみのある名前ですが、「三焦(さんしょう)」は知らない方も多いかもしれません。
「三焦」というのは、横隔膜より上の「上焦」、横隔膜より下でおへそより上の「中焦」、おへそから下の「下焦」から成ります。
全身の気や水液を全身に巡らせ、各臓器を栄養したり調整したりして働く臓器として東洋医学では認識されています。
しかし、解剖をしても該当する臓器が見つからず、何千年もの間「名在りて形なき臓器」と呼ばれてきました。
ついにその臓器が発見される
ところが2年前の2018年3月、ニューヨーク大学医学部を中心とするプロジェクトチームが論文を発表したのです。
それによると、皮下にある、臓器や血管、筋肉を包む単なる衝撃緩衝材と考えられていた「疎繊維結合組織」が、その空間を流れるリンパ液を介して全身にネットワークを張り巡らせる新たな器官としての機能を有していることが確認されたとのことなのです。
今までの顕微鏡の技術では、ホルマリンなどの固定液で生化学反応を停止させた状態の組織しか観察できませんでした。その為、体液が流れ出て、体液で満たされていた区画を囲むタンパク質の網目構造が平たくつぶれたものしか観察できていませんでした。
しかし、組織が生きたままの状態で観察をすることができる顕微鏡の登場により、これまでの解剖学とは合致しない、相互に連結する空洞を発見することができたのです。
Fasciaは「三焦」そのもの
その後、発見された器官は「Fascia(ファシア)」と命名されました。 その働きや定義についてはまだ未確定な部分も残るようですが、体液の移動通路として働き、各身体組織のネットワークを司るというのは、どう考えても三焦そのもの!
牛車腎気丸などの漢方薬やトリガーポイントなど、技術の進歩によって次々と東洋医学の理論や効能を裏打ちする証拠が発見されています。
そのことにより「エビデンス」を重要視する西洋医学との距離が少しづつ近づき、それぞれ補完しあって健康を支えていくことができるようになるのは、東洋医学を学ぶ者にとってはうれしい限りです。
それではハッピードックライフ♪
画像出典元:
https://nyulangone.org/news/new-york-times-researchers-say-they-have-found-new-human-anatomy
獣医師 横山恵理