昨年は1年を通じて胃腸の調子の悪いコがとても多く、薬を使っても下痢がなかなか治らなかったり、食欲が落ちてしまったりというコが続々と来院されました。
胃腸の調子が落ち着かない
今年の5月で17歳になる柴犬の女の子チコちゃんもそのひとり。とっても元気で、犬の幼稚園にも週に1回、アンチエイジングのために継続的に通っていました。
15歳になって歩くのがゆっくりになり、寝る時間が増えたチコちゃん。少しでも長く元気に歩いてもらいたい!と月に1回の鍼灸治療を始めました。16歳を超えたあたりから時々お腹がゆるくなったり、食が細くなっていきました。
そして、夜遅くにウロウロしたりする日も時々出てきました。宇津救命丸を飲んでもらうようになってからは夜の徘徊は落ち着きお腹も比較的安定していたのですが、12月の頭に突然立てなくなってしまい、ご飯も全く食べなくなってしまいました。
今まで平気だったことがストレスに
お話を伺ったところ、その3日前にシャンプーをして、疲れているはずなのにハァハァしながらウロウロしていて、その翌日幼稚園でお泊りをしたら立てなくなってしまったそうです。その直後に来ていただいたらのぼせて疲れてしまっている様子が脉から見受けられました。四肢には全く力が入っていません。老犬になると今まで大丈夫だったことがストレスになり、ストレスが原因で立てなくなってしまうこともあります。
この日は鍼灸治療に加えてプラセンタを腎兪に注射しました。すると、翌日からはちゅーるを食べるようになり立つ気力も出てきたそうで、2日後の治療時には大分元気になって支えれば立てるようになりました。1週間後には後肢がすべりながらも、自力で立てるほど回復していました。食欲も少しずつ改善していき、豚肉のおかゆなど食べるようになり、じきにドライフードも食べられるようになりました。
四君子湯(しくんしとう)が活躍
立てなくなった時は後肢に力が入らず、腎が弱っているため便がなかなか出なかったのですが、年明けからは逆に出る便が毎回ゆるくなってしまいました。漢方も腎陽を補い足腰に良い八味地黄丸から胃腸の働きをよくして、水分の停滞を改善する四君子湯という漢方に変更しました。その後、足の調子もかなり改善し、またお散歩へ行ったり幼稚園にも通えるようになりました。
12月から年末年始にかけて本当に下痢をしているコが多く、四君子湯をよく使いました。漢方に加え、お腹をあたためてくれる鶏肉のおかゆに肝に良い梅干しをほんの少し加えたごはんを与えていただいたりもしました。下痢だけでなく、食欲が落ちてしまうコもしばしばいました。胃は乾燥に弱いので寒さの影響もあるかなと思っていたのですが、立春を過ぎた今でもその症状はまだみられています。
マスクで清気が取り込めない
この原因はもしかしたら飼い主さんが関係している可能性があります。昨年から突如強いられたマスク生活。実はマスクをつけている弊害は呼吸がしづらいだけではないのです。私達は普段から呼吸によって自然界の清気を取り込んでいるのですが、マスクをつけていると肺がうまく清気を取り込むことができないのです。
肺は呼吸の他にも栄養を全身にめぐらせたり、気の上昇・下降の調節をしたりしています。その働きがマスクによって妨げられてしまうのです。犬はマスクをつけているわけではないのですが、飼い主さんが清気を取り込めていないと、母子同病で段々と犬にもその影響が出てきてしまいます。
肺の気が巡らないと、全身の気の巡りも悪くなり、脾胃の働きが悪くなったり、肝気の上昇が過度になってイライラしたりめまいやてんかん発作も起こりやすくなります。
ですので、人気のない場所ではマスクを外して深呼吸をしたり、可能であればマスクを外して外をお散歩して清気を取り込みましょう。「母」である飼い主様にも「子」である愛犬にもとても良いと思います。
それではハッピードックライフ♪
獣医師 佐々木彩子