Vol.64

肝性脳症とたたかうトイプードルと鍼灸治療

公開日:2016.02.17  / 最終更新日:2023.05.19
散針法による鍼灸治療をするトイプードル(写真は散針法による鍼灸治療)

あっという間に1月も過ぎ去り2月になってしまいました。暦の上では立春つまり春の始まりです。1年の中で最も寒い時期は越したということです。冬は五行でいうと「腎」の季節。足腰の痛みが出やすかったり、シニア犬・老犬にとっては体調を崩しやすい季節です。

親子関係と呼ばれる「肝と腎」

キュティアにも急患のワンちゃんがたくさんいらっしゃいました。

「調子が良かったからしばらくお休みしていたけど、また痛みが出てきてしまいました」

というコもちらほら。

冬を越したからもう大丈夫!というわけにはいきません。ようやく「腎」の季節は過ぎ去りますが今度は「肝」の季節がやってきます。

この腎と肝は親子関係と呼ばれ、密接なつながりで互いに影響しています。この話をすると長くなってしまうのでさておき。今回はまさにこの「肝と腎」の問題を抱えているわんちゃんのご紹介をします。

肝性脳症で神経発作

15才トイ・プードルのヒーセくんは4歳ころからずっと肝臓の数値が悪く、病院で処方される療法食を食べていました。肝臓は体内の様々な物質を代謝したり解毒をしてくれる臓器です。そのため肝臓が悪いと、アンモニアなどの有害物質が解毒されずに体内に蓄積されてしまい、肝性脳症という重篤な症状を引き起こします。

ヒーセくんも約4年前に肝性脳症で神経発作を起こし倒れてしまいました。その後もなんとか維持してきたものの、一昨年の秋頃から食欲が落ち始め元々2.6kgしかなかった体重が1.6kgにまで減ってしまいました。

そんなヒーセくんがキュティアに来院したのは去年の6月。若い頃からずっと肝臓用の低蛋白の療法食を食べていたこともあり、
・筋肉はほとんどなく
・背骨は弓のように曲がり
・頭も腰も下がっていて
・後ろ足はクロスしてしまい
・ハーネスがないと歩けない
状態でした。

東洋医学の治療を受けるトイプードル

豚肉を食べても黄疸がでない

調子が悪い日は夜寝なかったり、狭いところに入り込んだりと、認知症のような症状も出ていました。まずは1週間に1度鍼灸治療に通ってもらうことになりました。自宅では棒灸をしてもらうほかにマコモを飲んでもらい、療法食を減らして手作りご飯による食事療法も取り入れていただきました。すると1回の鍼灸治療で食欲が出てきました!

そしてお肉などのたんぱく質を取りすぎると黄疸が出ていたのが、豚肉を食べても黄疸が出なくなりました。1ヶ月後からは補助なしでも歩けるようになったので治療間隔を2週間に1度にしました。

漢方薬もプラスに

その後は雨の日にウロウロして、落ち着かなかったり、後肢がピクピクけいれんしたりする症状がでてきたので、漢方薬も併せて処方するようにしました。すると調子も安定し体重も1.6kgから1.9kgに増えました!

ヒーセくんのようにずっと「肝」の病を抱えていたコの場合、「肝」のお母さんにあたる「腎」が子供の看病疲れで弱くなりやすいのです。そのため14歳という年齢で下半身が弱くなってしまった可能性が考えられます。

またその逆に「腎」というのは生まれつき両親からもらったエネルギーを蓄えておくところなので、加齢とともに誰もが弱くなっていくところです。

今まで「肝」を支えたり制御していた「腎」が、高齢になって弱ってくると「肝」が暴走することがあります。これがイライラ、夜鳴き、不眠症やてんかん発作の原因になります。

最後は少し難しいお話になりました。カウンセリングの時に飼い主さんに説明することが多い「肝と腎」の問題。シニア犬になると抱えているコが非常に多いので少しだけお話させていただきました。

シニア犬・老犬にとっては冬に引き続き、春もしっかりとケアしてあげたい季節です。

それではハッピードッグライフ☆

キュティア老犬クリニック
  獣医師 佐々木彩子
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