Vol.119

メラノーマに向きあうトイプー16歳

公開日:2020.09.21
シャンプー後のトイプードル

今回は16歳でメラノーマ(悪性黒色腫)に向き合っているトイプードル、ロックくんをご紹介します。

状態は肝脾不和(かんぴふわ)

ロックくんがキュティアをはじめて訪れたのは2年前の2018年。定期的に腰痛を繰り返すようになってきたので、鍼灸を試してみたいとのことでした。その他にもアレルギー性皮膚炎や胆泥症、甲状腺機能低下症、脾臓摘出といったトラブルをかかえていました。

西洋医学の視点で見ると、とても沢山の病気を抱えているように見えますが、東洋医学的にはどの症状も根本は同じ。トイプードルは「腎」が弱い犬種です。その上マイペースで「ぼくはこうしたい!」という思いが加わって強い「肝」の熱となり、その熱が「脾」を損傷させていました。その結果「肝脾不和(かんぴふわ)」という「肝」と「脾」のバランスが崩れた状態となっていたのです。

鍼灸や整体、お家マッサージで腰痛は出なくなったもののなかなか皮膚や消化器症状が落ち着かず、毎日の棒灸にマコモ足湯も加えてもらって何とか過ごしていたロックくんでした。

ところが2019年末頃、飼い主さんが多忙になってしまったことで「肝脾不和」の状態が進行し、慢性膵炎になってしまったのです。しかし日ごろの手厚いお家ケアが幸いし、週に1・2回皮下点滴を行うだけで吐き気や下痢といった症状を出すことなく、穏やかに過ごすことができていたのでした。

メラノーマを発症

そして2020年6月末、右の頬が腫れていたため検査を行ったところ、メラノーマであることがわかったのです。メラノーマ(黒色腫)は、高齢犬の口腔内腫瘍では最も発生頻度が高く、口腔内にできた場合、そのほとんどが悪性となります。

悪性度も高く、転移や再発をする力がとても強いので、根治を目指す場合、腫瘍の周囲をかなり広範囲で切除する外科手術や放射線治療が必要となってきます。合併症などがありそういった治療に身体が耐えられない場合、抗がん剤が効きにくいタイプの癌であるため、免疫力をあげていくなどの緩和ケアが治療の中心となってきます。

西洋医学に加えて鍼灸治療と水鍼

ロックくんの場合はもちろん後者。積極的な治療は難しい為、かかりつけ病院での処置はメラノーマでも実績があるとされる免疫を整える注射だけとなりました。東洋医学では良性悪性問わず、腫瘍は気や血(けつ)が停滞して起こる「淤血(おけつ)」によるものとされます。

そして口は五臓の「脾」に属しており、加齢によって「腎」の熱を冷ます力が弱まり、いままで以上に「肝」の熱が強まってしまった結果がメラノーマを引き起こしたと考えられました。すでに「肝脾不和」に対するお家ケアは行っているので継続とし、キュティアでは鍼灸の頻度を増やし、ホモトキシコロジーの水鍼も始めることとしました。

メラノーマと向き合っているトイプードル

じわじわと進行しているものの

しこりは着々と大きくなってしまっているものの、マイペースにのんびりとすごしているロックくん。口の中にできたメラノーマの場合、血と膿が混ざった独特の強烈な臭いが発生するのですが、3か月経過した現在でも、まったくと言っていいほど臭いがありません。また、癌が進行してくると「癌悪液質」という身体を作る為の機能が損傷し、顕著な食欲不振や体重減少が起きます。

そのためじわじわと痩せては来ているものの、お肉やプリンなど、その日に気に入ったものはしっかり食べてくれています。いままで様々なメラノーマのわんちゃんを診てきましたが、大がかりな外科手術や放射線治療を行わず、こんなに穏やかにのんびりと癌と共存できているのははじめてで本当に驚いています。

癌と上手くつきあう

これまでの症例との違いといえば、以前、腎不全のときにも取り上げたほどデトックス効果の高いマコモの足湯をはじめとした充実したお家ケア。一つ一つはちょっとしたことなのですが、毎日の積み重ねが穏やかな癌との共存生活に大きな力となることを改めて実感することとなりました。

それではハッピードックライフ♪

2020/09/21
キュティア老犬クリニック
  獣医師 横山恵理
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