Vol.142

老犬の下痢に抗菌薬は必要?

公開日:2023.10.12  / 最終更新日:2023.10.16
老犬の下痢に抗菌薬は必要?老犬はちょっとしたことですぐに下痢をします。
・ごはんを食べ過ぎた
・いつもと違うものを食べた
・エアコンで冷えてしまった
・ストレスがかかった
・季節の変わり目による体調変化
・前線や台風による気圧変動
など様々なことが原因で便がゆるくなってしまいます。

また、アレルギー性腸炎や炎症性腸疾患、腫瘍など様々な疾患に伴う下痢、抗生物質や抗がん剤などの薬剤投与による下痢もあります。

下痢に抗菌薬は意味がない?

急性の下痢の場合

急性の下痢症状で抗菌薬が処方されているケースを時々目にします。それは、検便をして悪玉菌の割合が多かったり、病原性のある菌がいたりしたためだと思います。しかし、抗菌薬の使用により悪さをする菌の数を減らすことで下痢が改善したとしても、自然に治癒させた場合と治癒までにかかる期間は1日程度しか変わらないというデータもあります。そして短期間の抗菌薬の使用であっても耐性菌ができてしまいます。そのため、抗菌薬を使用するメリットは少ないのです。

膀胱炎など抗菌薬による治療が必要な際に薬剤感受性試験を行うと、どの抗菌薬も使えない、使える抗菌薬が限られてしまうというコが時々います。それも抗菌薬を安易に繰り返し使用してきたことが原因かもしれません。

2020年に農林水産省からも指針が出ています。

薬剤耐性とは抗菌薬に対する抵抗性を意味し、薬剤耐性を有する細菌を薬剤耐性菌と呼びます。抗菌薬を使用すると、薬剤耐性を示さない細菌(感受性菌)は死滅しますが、薬剤耐性菌は生存し、増殖します(「薬剤耐性菌の選択」)。

こうして増殖した薬剤耐性菌による感染症は、抗菌薬による治療が難渋するため、結果として難治性感染症や致死性感染症を引き起こすこととなります。

引用:愛玩動物における抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-

明らかに感染症である、全身性の炎症があるなど抗菌薬が必要な場合もあるので自己判断はせず、かかりつけの先生とよく相談しましょう。

老犬にも善玉菌と悪玉菌のバランスが重要

慢性の下痢では?

老犬には慢性的に下痢を繰り返してしまうコも多くいます。下痢をした時点で腸内細菌叢のバランスが乱れているのですが、抗菌薬を投与することでさらに腸内細菌叢のバランスの崩れ(ディスバイオシス)を悪化させてしまう可能性もあります。

メトロニダゾールやタイロシンなどの抗菌薬には抗炎症作用もあるとされ、慢性腸症において数ヶ月にも渡って長期的に処方されているケースもあります。しかし、それらのエビデンスは少なく、むしろ腸内の有益な菌を減少させ、大腸菌などの病原性菌を増勢させ、ディスバイオシスを悪化させてしまうという報告があります。

やはり、慢性の下痢においても抗菌薬を使用するメリットは少ないと考えられます。

抗菌薬に代わる治療法

おうちでできるケア

検査で基礎疾患が見つかった場合にはそちらの治療も必要になりますが、多くのケースで食事療法がまず第一です。アレルギーに配慮し加水分解されたフードや脂質を控えたフード、高消化性フードなど様々なものがあるのでそのコに合ったフードを見つけることが大切です。

時々、どのドライフードでも下痢をしてしまう、ドライフード自体が合わないという老犬もいます。その場合は手作りごはんにしてみましょう。まずはシンプルなだし汁のおかゆからはじめ、徐々に鶏むね肉や白身魚などのタンパク質を追加していく、少しずつ野菜も足していく、と段階的に食品の数を増やしていくようにしましょう。手作りレシピの参鶏湯がおすすめです。(文末にリンク先urlあり)

シニア犬におすすめの参鶏湯

また、腸内細菌叢を整えるためにプレバイオティクスやシンバイオティクス(プロバイオティクス+プレバイオティクス)などのサプリメントを与えるのもおすすめです。プロバイオティクスが生きた菌そのものの作用によって腸内細菌叢を整えるのに対し、プレバイオティクスは有益な腸内細菌の餌になるものを摂取することで腸内環境を整えるサプリメントです。またその両方を組み合わせることでさらに効果を高めてくれるのがシンバイオティクスです。

代謝や免疫にも関わる腸内細菌ですが、最近の研究から慢性腎臓病にも深く関与していることが分かってきました。これらを積極的に取り入れることで腸内環境が改善され、免疫力アップや様々な病気の予防にもつながるのです。

東洋医学による下痢の治療

抗菌薬に代わる下痢の治療法として最も有効なのは漢方薬です。急性の下痢の場合は漢方薬の投与により1~2日で治ってしまうケースも非常に多いです。慢性的な下痢の場合は急性よりも改善までの時間はかかりますが、何をやっても良くならないというコもおうちケアや鍼灸と合わせて治療を行っていると改善することがほとんどです。

このようにちょっとしたことで下痢をしやすい老犬も抗菌薬を使わずにケアをしてあげることができます。1日に何回も何回も下痢してしまうようなひどい下痢の場合は脱水してしまうので皮下点滴や下痢止めの注射をしてもらいに病院へ行きましょう。

元気で食欲もあるけれど、出るウンチがゆるいなどの軽い症状の場合はごはんを消化に良いおかゆのみにして、お腹を小豆カイロや棒灸などであたためてあげましょう。

段々と朝晩は冷えるようになってきたので腹巻きで冷え予防も忘れずに♪

それではハッピードックライフ♪

キュティア老犬クリニック
獣医師 佐々木 彩子

引用:
愛玩動物における抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/attach/pdf/torikumi-25.pdf

関連記事:
手作りレシピ参鶏湯
https://cutia.jp/shiniaken-rouken-tezukuri-gohan.html#samugetan

シニア犬・老犬の下痢について~美味しいものはほどほどに!~
https://cutia.jp/jyuuishi-inu-neko-column/inu-shokuji/2012-09-17

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