今年はなかなか寒気団が降りてこないとのことで、まだまだ過ごしやすい気温が続いています。でも暦の上では「寒露」。露が冷気によって凍り付きそうになる季節を迎えています。そんな冬に向かう今の季節から「温活」を愛犬に取り入れることで、寒さに対応できるよう身体を整えていきましょう。
温活に手軽なお灸をしましょう
「温活」にお勧めなのがキュティアに来院したシニア犬・老犬の飼い主さんに必ずと言ってよいほどお願いしているお家でのお灸です。今回はホットパックや使い捨てカイロなどではなく、お灸をお勧めする理由や種類、簡単な使い方についてご紹介させていただきますね。
お灸に使う艾(モグサ)はよもぎを乾燥させて、葉の裏に生えている絨毛を精製したものです。この絨毛にはチネオールという揮発性の精油が含まれています。火付きがよく熱さも少ないため、お灸に最適な材料とされています。
またよもぎは西洋・東洋問わず身体を温め、様々な症状に効果のあるハーブとして使用されています。東洋医学ではお灸は熱とともに「氣」を身体に入れることができる、と考えられています。
実際ホットタオルや使い捨てカイロに比べると、温かさの入る深さや効果の持続性が格段に優れています。代謝や筋肉が落ち自分で発熱する力が低下している病気や、シニア犬の子に使用していただいています。
直接モグサをひねる生姜にのせるほうろく灸など様々な種類のお灸がありますが、今回はキュティアで主におススメしている3種類のお灸を紹介いたします。
1. 棒灸
【特徴】
艾(もぐさ)をまとめて棒状にしたものです。ツボの位置をあまり気にせず手軽に使うことができます。ただし煙が多いのが欠点です。艾を炭にした無煙棒灸もあります。
【使用方法】
一端に火をつけ身体から5cm程離してかざして使用します。まず肩甲骨の間を温めてから、背骨に沿って下に向かって温めていき、最後は腰回りをしっかりと温めて終わりです。
時間は小型犬で1~2分、大型犬で5分ほどを目安にします。一日1~2回行うとよいでしょう。
2. 長生灸
【特徴】
艾の塊の下に土台をつけた、よく知られているせんねん灸と同じ台座灸の仲間です。人間の背中と違い犬の背中は丸みが強いのでせんねん灸等、台座に高さがあるものは途中で落ちてしまうリスクが高いため、台座の薄い長生灸をお勧めしています。
【使用方法】
火をつけてツボにのせます。台座の下にシールがついているので身体に張り付けることができます。火が消えた後、台座が手で触れるくらいまで冷めたら外します。ツボに使用するので短時間でしっかりと効果を出すことができます。
一番使いやすいのは身体の側面の肋骨の終わりのラインを背中に上がっていった、背骨の両側「腎兪(じんゆ)」というツボです。
3. せんねん灸太陽
【特徴】
シールを剥がし直接貼り付けて使う火を使わないお灸です。小型のカイロに艾シートが入った構造になっています。犬がじっとしていないなど、火を使うのが難しい場合や忙しくゆっくりお灸している時間がない時に便利です。
【使用方法】
3~4時間はしっかりと温かいので、張り付けたままにして半日くらいは使えます。毛が長くせんねん灸太陽が落ちてしまうコ、シングルコートで低温やけどのリスクがあるコでは洋服の上に張り付けるとよいでしょう。
肩甲骨の間の「身柱(しんちゅう)」や、身体の側面の肋骨の終わりのラインを背中に上がっていった背骨の上「命門(めいもん)」のツボに使うのがおススメです。
私はまる1日仕事の時は必ずこの2か所に太陽を貼っています。肩に余計な力が入らず立ち仕事の負担も大分軽減されるのです。
ちょっとしたことに思えますが、毎日太陽を腰に貼るだけで3・4回発症していた膵炎が全くでなくなったコもいるほど。上手く取り入れると効果の高いお灸、ぜひ試してみてください。これらのお灸は一般的なネット通販などで購入できます。
それではハッピードッグライフ♪
獣医師 横山恵理