今回は来月17歳になるラサアプソの女のコ、フランちゃんのお話です。フランちゃんは心臓が悪く、4年ほど前から毎日お薬を飲んでいましたがその他には大きな病気はありませんでした。
興奮状態が続き脳腫瘍の疑いも
ところが去年の夏に急性胃腸炎を起こし、嘔吐下痢が止まらず食欲も落ちてしまいました。一気に体重も減り足腰も急に弱くなってしまいました。そして、秋頃からはお留守番中に寝なくなってしまいました。飼い主さんが仕事の途中で様子を見に自宅へ戻ると、大きな声で吠え続けている日もあったそうです。
冬頃からは前肢に力が入らなくなってしまい、立つことがだんだんと難しくなりました。旋回もはじまり立たせてもすぐに転んでは鳴き、昼も夜も2・3時間寝ては起きて鳴いての繰り返しでした。
飼い主様もご夫婦共にお仕事のため、かかりつけの病院で興奮を抑える鎮静剤をもらって飲ませていました。が、それほど効果はなかったそうです。そして年が明けた1月末には3日間ずっと鳴きっぱなしの興奮状態が続きました。かかりつけ医では脳腫瘍かもしれないと言われ、けいれんを抑える飲み薬と座薬を処方されました。
その2日後のこと、少しでもこの興奮状態をなんとかしてあげたい、おだやかに過ごさせてあげたい。そんな思いで飼い主様はキュティアに来院されました。
原因は歩けなくなったことに
マットの上で後ろ足をバタバタ動かすフランちゃんを初めて診たとき、「まだまだ歩きたいんだな」と思いました。
神経の反射は四肢の足全てで消失していましたが、支えてあげればなんとか後ろ足が動かせていました。身体のエネルギーである「気」は頭の方に集まり興奮していました。急に身体が思うように動かなくなり混乱していたのでしょう。
東洋医学的には、四肢の力が入らなくなる=腎の弱り=気が上昇しやすい=興奮して眠れない、という悪循環に陥ってしまうのです。
そこで頭の方に上がってしまっている気を下してあげて、腎のエネルギーを補ってあげる鍼灸治療を行ない漢方薬の処方をしました。しかし最も重要なのは、なんでフランちゃんがそのような状態になってしまったかという根本の原因です。
それは歩けなくなってしまったことにあります。これを解決してあげないことには、いくら治療をしていてもなかなか改善しません。
車イスを使ってみる
そこで車イスの使用をおすすめしました。キュティアにちょうど良いサイズの車イスがあったので試しに乗せてみました。そしてお仕事の間はどうしても寝かせたままになってしまうので、週3日ほどデイケアに通うことになりました。
最初は車イスに乗せても首は下にだらんと垂れ下がり、前足にも全く力が入っていませんでした。ですが少し動かすことができる後足で、なんとか蹴って少しずつ前に進みはじめたのです。
治療してから1週間が経った頃、少しずつ首が上がるようになり前肢の動きが出てきました。そこからの回復はとても早く、徐々にスムーズに歩行を楽しむようになりました☆
今では日中はずっと車イスに乗って歩き、疲れたら休んでを繰り返しています。以前のように興奮したり、吠えて鳴きやまなかったりすることはなくなりました。
車イスで生活が一変
自由に歩かせると、壁にぶつかってしまったり、家具に車イスが引っかかったり、小さく旋回してしまったりします。そこで、固定した支柱と車イスを細いパイプでつないぎ、大きく旋回できるよう車イスに簡単な改造を加えました。
お家でも支柱を用意して、デイケアに来る時は車いすとパイプも持ってきます。キュティアでのデイケア中も、お家と同じように歩くことができるんです♪
脳腫瘍かもしれないと言われ、一時は安楽死ま考えなければいけないと言われたフランちゃん。キュティアが提携しているケージレスのペットホテルにも、2泊3日でらくらくお泊ができました。
あきらめずに少しでも何かできることを探してあげることで、こんなにも飼い主さんとわんちゃんの生活は大きく変わります。
高齢になると予想もしていなかった様々なことが起こります。そんな時でも病気にだけ目を向けるのではなく、わんちゃんと飼い主さんにとって何が一番幸せかを探すことで解決策が出てくるかもしれません。
それではハッピードッグライフ♪
獣医師 佐々木 彩子