Vol.122

メラノーマで下顎を切除のダックス

公開日:2020.12.20  / 最終更新日:2023.06.29
メラノーマのため下顎を切除したミニチアダックス

2020年も残りわずかとなりました。今回は12月31日の大晦日に17歳を迎えるミニチュアダックスのロビンくんを紹介します。

ロビンくんは少し体格の大きめな男のコで、8歳の時に椎間板ヘルニアで入院したことがありましたが、手術をすることなくステロイド治療で症状が改善しました。

その他、前立腺肥大のため11歳で去勢手術を行い、13歳からは僧帽弁閉鎖不全症のため投薬を始めました。軽度の心臓病はあるものの元気に過ごしていたロビンくんです。

厄介な口腔内メラノーマ

ところが、2019年6月に口腔内に腫瘍が見つかりました。日本大学病院で検査をしたところ、腫瘍は悪性黒色腫(メラノーマ)であることがわかりました。皮膚にできるメラノーマと違い、口腔内メラノーマはリンパ節や肺へ高い確率で転移する悪性度の高いガンです。

転移率は80%にも及ぶとの報告もあります。無治療の場合は進行度にもよりますがだいたい余命2~3ヶ月と言われています。外科手術で取り除いてもかなり広範囲に切除しないと再発率が高く、非常に厄介なガンです。

ロビンくんは不幸中の幸いで、腫瘍のできた場所が手術で摘出できる場所だったため、6月下旬に下顎ごと切除する手術を受けました。10日ほどの入院でしたが、手術や入院のストレスのせいか退院後からお母さんの後追いをするようになり、手足をものすごくなめるようになってしまいました。

そして、術後の経過は良かったものの12月頃からだんだんと後肢の動きが悪くなり、年明けからは小刻みな震えと下肢の虚脱が見られるようになってしまいました。

ヘルニアが再発したかと?

大変な手術を乗り越えたロビンくん、なんとかまた歩けるようにさせてあげたいと、キュティアへ来院されたのは今年の1月のことでした。お母さんによく話を伺うと、ここのところお母さんのご両親の介護でお母さんが忙しかったり、娘さんの成人式があったりとお家の中がバタバタしていたそうです。

お母さんはまたヘルニアが再発したのかと思っていたそうですが、ヘルニアではなくストレスによる肝の失調と腎の弱る冬という季節が重なって起きた症状でした。ロビンくんは元々ストレスに弱く、病院へ行った翌日は必ずお腹がキュルキュルなったり体調が悪くなったりしていたそうです。

メラノーマで下顎を切除しでも元気なダックス

鍼灸治療でのぼせを改善

初診の時は脉は柔らかく力が無く、疲れている様子で、頭を触るととても熱くなっていました。のぼせてしまって下半身に力が入らなくなってしまっている状態でした。最初に百会という陽経の交わるツボにお灸をして頭の疲れやこもった熱を流してあげて、徐々に下半身の方へおろしていく治療を行いました。

翌週の治療の時にはまだ頭も熱く、後肢の動きもそれほど改善がなかったのですが、その翌週にはのぼせも改善し、足も走るようになるまで回復していました! その後は治療間隔を2週に1回を月に1回と減らしていきました。

免疫力アップで楽しい老犬生活を☆

今でもガンの検診のため病院へ行くとお腹がキュルキュルしてしまったり、お留守番の時間が長くなるとキュルキュルなってしまうことはありますが、大きく体調を崩すことはなくなり、とても元気に過ごしています!

口腔内メラノーマを外科手術単独で治療した場合の生存中央値は150~318日とされていますが、ロビンくんは目標にしていた1年を越え、もうすぐ1年半が過ぎようとしています。これからも鍼灸治療でストレスを抜いて免疫力をアップして、楽しい老犬生活を送ってくれたらと願っています!

それではハッピードックライフ♪

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キュティア老犬クリニック
  獣医師 佐々木彩子
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