Vol.127

だからペットに生食肉は要注意

公開日:2021.05.20  / 最終更新日:2023.06.04
ペットが食べれる生食肉

根強い人気を誇る犬の生肉食、通称「生食」。賛否両論ありますが、キュティアでは3つの条件がそろっている場合のみにしてもらうようお願いしています。

生肉食が大丈夫な3つの条件とは

1. 人間も生で食べることができる肉を使用している
2. ドライフードを併用していない
3. たっぷりと身体を動かせている体力のある個体である

ことなんです。

人間に許可おりてなければペットにも危険

今、日本で人間に生での食用許可が下りているのは、食肉加工処理場で「生食用食肉の衛生基準」に基づいて処理された馬肉のみとなっています。人の食中毒の原因となるカンピロバクターやサルモネラ菌などは、犬や猫においてもトラブルを起こすことが確認されています。

また、近年ブームとなっているジビエの生食は絶対に!厳禁!!野生動物はE型肝炎や犬や猫では致命的となるオーエスキー病、肝蛭(かんてつ)、住肉胞子虫(じゅうにくほうしちゅう)といったウイルスや細菌、寄生虫の宝庫です。

冷凍したとしてもウイルスを殺すことはできません。ときおり「犬用」を謳って販売しているお店があるようですが、それはあくまで「人間用に生食販売の許可がおりていない」だけであって「犬には許可が下りている」わけではありません。

ドライフードとの併用は消化不良の原因に

ドライフードにより胃酸の酸性度が弱まってしまう。ドライフードに適した腸内細菌と生食に適した腸内細菌が異なる。などの理由から消化不良を起こし、リーキーガット症候群などのトラブルを起こすことが報告されているためお勧めしていません。

リーキーガット(Leaky Gut)とは、腸管上皮細胞によるバリア機能が低下して腸壁の透過性が上昇することで、本来、腸(Gut)を透過しない未消化物や老廃物、微生物成分などが生体内に漏れ出す状態(Leak)のことをいいます。

さらに、これらの物質が血流に入ることで体のさまざまな部位に運ばれ、炎症を引き起こすことで自己免疫疾患やアレルギー、感染症など多くの疾病の発症や憎悪に関わると考えられています。

引用:ヤクルト中央研究所

生肉は消化しにくい

生肉は自身に消化酵素を含む、とはいうものの、調理肉にくらべて消化しにくいことには変わりありません。若く体力のあるうちは問題ありませんが、ある程度年を重ねるて消化能力が落ちてくると負担となってきてしまいます。

また、東洋医学的には胃内調理の為に胃に集まった熱が再び全身に巡ることができなくなってしまうことで発生する「胃熱」の状態が、嘔吐や咳などの様々な症状の原因になると考えます。

この「胃熱」も、循環を促す全身運動や、熱を冷ます「水=腎の気」が充実している時でしたらこもることはありませんが、年を取り、腎の気が衰え、活発に動くこともなくなってきてしまうとなかなか散らすことができなくなってしまいます。

それでもやはり生肉なら

上記の条件を満たすとなるとなかなかハードルが高くなってしまいますが、「酵素」は他の食材からも取り入れることはできますので、様々なリスクをおかしてまで無理に生の肉にこだわる必要もないのではないでしょう。

とはいえやはりジューシーなお肉を食べさせたいという場合は、厚生労働省で食中毒予防のために定められた「中心温度65℃15分」の低温調理加工をおこない、人肌程度に温めたものを与えるようお勧めしています。

それではハッピードッグライフ♪

関連コラム:
シニア犬の栄養吸収に大事な胃酸
https://cutia.jp/jyuuishi-inu-neko-column/sinia-inu-rouken/2023-02-20

参考サイト:
農林水産省 オーエスキー病
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/eisei/e_ad/index.html

キュティア老犬クリニック
  獣医師 横山恵理
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