Vol.123

シニア犬の保湿ケアどうして必要?

公開日:2021.01.20

後足・前足に変形がある犬のパグキュティアには他の症状改善相談で来院されているけど、実は皮膚トラブルも持っている子も少なくありません。そして「酷い時には痒み止めを処方してもらっている」ことがほとんどです。

パグのマロンちゃんの場合

以前から変形性脊椎症による腰痛はあったのですが、加齢に伴って症状が進行。後ろ足だけではなく前足にまで引きずりや変形が出てきてしまったので、キュティアをおとずれたのでした。

そして、3歳からアトピーがあって・・・、ということで診せてもらったマロンちゃん皮膚は、手足もお腹も真っ赤で皮膚もまばらな、とてもかゆそうな状態となっていました。他にも繰り返す外耳炎や膀胱腫瘍にともなう膀胱炎など、様々なトラブルを抱えて疲れてしまっていたので、初回は鍼灸治療の他は薬膳やマコモをごはんに少し取り入れることで様子を見ることとなりました。

鍼灸の次の日にはすごくシャキッ!としてマコモも問題なく取り入れられたマロンちゃん。飼主さんの判断で軟膏なども試してみて痒みは少しましになったというものの、まだまだ脂によるべとつきや赤みも収まっていなかったので、改めて皮膚病治療の基本についてお話をさせていただきました。

痒み止めを使い続けるしか・・・

そして、かかりつけの病院からは「痒み止め」としてアポキルを処方されるだけ。ご自身が調べた薬用シャンプーで洗う他は、添付文書に「投与期間は1年を超えないこと」と明記されているのに・・・、と不安になりながらもアポキルを4年間使用し続けるしかなかった、というお話を飼い主さんから伺ったのでした。

アポキルは「選択的」とはいえ免疫抑制剤です。ステロイド剤に比べれば副作用は出にくいとはいうものの、無計画な長期使用は身体に負担をかけますし、痒みや炎症を抑えることで一時的に皮膚症状を抑え込むだけです。皮膚を「丈夫」にする作用はありません。

そこで、大切なのが「保湿」

皮膚病には乾燥がつきもの

皮膚の乾燥はそれだけでも痒みがでてしまいますが、犬によくみられる皮膚トラブルも、どれも皮膚の乾燥と切り離すことができません。「アトピー性皮膚炎」は乾燥による刺激物質への過剰反応やバリア機能低下で悪化します。「脂漏症」や「多汗症」は乾燥による皮脂や汗の過剰分泌が原因となることが多いです。「膿皮症」は乾燥によるバリア機能低下が大きくかかわっています。

そこで、抗菌や角質溶解機能を持ったシャンプーで皮膚表面を清浄した上に、アレルゲン除去食や「マコモ」で体内環境を整えること。そして、保湿を加えて負のサイクルを断ち切ることで少しづつ正常な状態に近づけていくことが皮膚トラブル改善の要となってきます。

皮膚病のケアのためマコモ風呂にはいるパグ

皮膚ケアで長年のお悩み改善

週2回のマコモ風呂とマラセブシャンプーそして毎日の保湿ケアの話をキュティアで聞いたマロンちゃんの飼い主さん。翌日には皮膚専門医のいる病院への転院を決意し、皮膚ケアの他、抗生剤なども取り入れつつアポキルを減薬することなりました。

そして、2週間後には皮膚の赤みが和らいだだけでなく、手足にはしっかりと毛が生え始めていたのでした☆♪

おすすめの保湿剤

保湿剤は、軽度の乾燥であればドラッグストアでも入手しやすいハトムギ化粧水でもよいのですが、皮膚トラブルの悩みを抱えている場合、皮膚のターンオーバーが早まり、十分な保湿成分を生み出せなくなっている為、角質の保湿機能の大半を担う「セラミド」入りのスプレーをお勧めしています。

シニア期にはいったら特に

いままで皮膚トラブルとは無縁だったというコでも、シニア期以降は乾燥に要注意。保湿の要「セラミド」の産生機能は、人間では20歳を境に低下し、50歳には半分ほどになってしまうことが分かっています。

これは、犬でいうと、ちょうどシニアケアが必要になってくる8~9才に該当します。普段は毛に覆われていてあまり気にならないかもしれませんが、特に秋から冬にかけては、時折毛をかき分けて皮膚の状態を確認してあげてみてください。

フケが多い、ほんのり赤みがある、なんだかハリがないかも、といった状態ならば乾燥のサイン。健康な皮膚とツヤツヤの被毛で若々しくいてもらうためにも、保湿ケアをはじめましょう。

それではハッピードックライフ♪

キュティア老犬クリニック
  獣医師 横山恵理
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