フレイルって?
加齢による心身の回復機能の低下により、介護が必要となる一歩手前の状態を指します。犬の場合、以前からキュティアでも取り組んできたロコモティブシンドロームを含む「身体的フレイル」と、脳機能や運動機能の衰えに由来する「精神・心理的フレイル」の2つの種類に分けることができます。
身体的フレイルの予防
以前からお伝えしているようなロコモ予防(積極的に運動習慣をとりいれる、ご飯には良質なたんぱく質を)といったことは一般に周知されてきているようで、飼い主さんたちもすでに行っていることが多いように感じます。しかし、盲点なのが「内臓機能の衰え」です。
「犬だからお肉!」が通用するのはシニア期まで。12・3歳を超えてハイシニアとなってくると、人間の中年以降と同様に消化液の分泌機能も衰えてくるので、お肉や脂の消化吸収が苦手になってきてしまうのです。そこで筋肉のエネルギーである炭水化物への置き換えが必要となってきます。朝のご飯の食いつきが今一つ、胃液をはくようになってきたなどの症状がみられてきたら、炭水化物の割合を増やしたり、お腹が弱い子用のフードに変えたりしてみてはいかがでしょうか?
精神・心理的フレイル予防
犬の方から自発的におもちゃで遊んだり、お散歩時にくん活を積極的に行ったりしなくなってくる分、意識的に飼い主さんが愛犬の気持ちを盛り上げるようなアプローチを取り入れるとよいでしょう。車でお気に入りの公園に出かけたり、スキンシップを増やしたりして「楽しい♪」と感じる時間を作るようにしていくのもおすすめです。また不安を感じやすくもなってくるので、人の気配が感じやすい生活導線を取り入れるのもよいでしょう。
東洋医学も効果的
上記のような愛犬のおうちケアに東洋医学のケアを取り入れるのもおススメですが、その際少しだけ気を付けるとより的確な効果を高めるポイントがあります。それは「腎」と「脾」どちらの衰えの方がより強いのかを見極めることです。
「腎虚(じんきょ)タイプ」と「脾虚(ひきょ)タイプ」の違い
飼主さんむけの東洋医学解説では「加齢によるトラブルは腎臓の弱りによって起こる」とシンプルに説明されていることが多いように感じます。しかし、愛犬がもともと消化機能=「脾臓」の力が弱い体質であった場合、こちらの弱りの方がよりフレイルの進行に大きな影響力をもってしまうのです。
腎虚が強いタイプでは、骨盤が下がり前重心の姿勢となってきます。また、寒さでフレイルの症状が悪化することが多いです。熱をコントロールしにくくなるので、頭が熱い、怒りっぽいといった変化がみられることも。この場合は「補腎」の薬膳(昆布などの黒い食品や豚肉など)をトッピングしたり、腰から下を棒灸や小豆カイロで温めてあげるとよいでしょう。
脾虚が強いタイプでは、太ったわけではないのに下腹部がぽよんと下垂し、脇の下や鼠径部のスジがガチガチに硬くなってきます。また、湿度や暑さでフレイルの症状が悪化することが多いです。
もともと甘えん坊の気質なのに拍車がかかって分離不安等が出てくることも少なくありません。この場合は「健脾」の薬膳(お米や少量の蜂蜜、鶏肉など)をトッピングしたり、お臍の下や股関節周りを温めてあげるとよいでしょう。
ちょっとしたおうちケアならタイプを厳密に見極める必要はありませんが、漢方薬やサプリメントで東洋医学ケアを行う場合は要注意。補腎薬は消化器の動きを抑える作用も在る為、脾虚タイプのコに使ってしまうとお腹トラブルの原因にもなってしまいます。
しっかりとした東洋医学的なタイプ判断には脉や舌の状態を確認する必要があります。うちの愛犬はどっちのタイプかな?といったちょっとした疑問でも、より具体的なアドバイスとともにカウンセリングを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
それではハッピードックライフ♪
獣医師 横山恵理