漢方薬の基本

漢方薬の基本

キュティアでは、日本薬局方規格の漢方薬の処方を行っています。

クリニックで漢方薬を処方する際、東洋医学の専門的視点から口頭で解説するととてもややこしくなってしまいます。そこで、今どんな症状が問題でどんな効果がある漢方を処方するかといった飼い主様への説明は、かなり簡易的な表現を選んでお話をさせていただいています。

しかし、ここ数年、とても嬉しいことに少しずつ動物への漢方薬処方も広まってきていて、ご自身で色々と勉強なさっている飼い主様からもう一歩踏み込んだ解説を望まれる場面もでてきています。

その際には紙に書くなどして対応してはおりますが、せっかくHPがあるので、キュティアで取り扱っている漢方薬をより専門的に解説紹介させていただこうと思います。

東洋医学の基本的な考え方

漢方薬のことを理解するためには、いつもお話している五行の他、いくつかの基本的な考え方を知っておく必要があります。

気・血・津液(き・けつ・しんえき)

漢方薬の気・血・津液と陰・陽

気・血・津液は人体を構成する基本物質です。臓腑や経絡などの組織器官が活動する源であり、また、臓腑や経絡などの組織器官が正常に活動することによって代謝・規制されます。

気(き)

陰陽の「陽」に属していて、
・推動(すいどう)
・温煦(おんく)
・防御(ぼうぎょ)
・固摂(こせつ)
・気化(きか)
の5つの生理機能をもっています。

血(けつ)

「陰」に属していて、脈管中を流れる赤い液状物質。豊富な栄養で身体を滋養する。

津液(しんえき)

「陰」に属していて、身体の正常な水液のことを指します。

虚・実(きょ・じつ)

体質や病気の状態を判断するために欠かせない診断基準です。

「虚証」は気・血・津液が不足して起こる症状、「実証」は寒さやストレスなどの邪気(じゃき)が身体を犯して起こる症状を指します。

起こっている症状が同じでも、虚実が異なれば必要な漢方薬は全く違うものとなるのです。

漢方薬を知る為の基本ルール

配合原則

漢方薬は2種類以上の生薬を「配合原則」というルールに基づいて決められた分量で組み合わせて作られています。それが「君・臣・佐・使」という考え方です。

君薬(くんやく)
 

病の主な症状の治療を目的としていて、方剤構成の中で欠かせない生薬を指します。

臣薬(しんやく)
 

君薬を補助する生薬で、以下の二つの種類があります。
1. 病の主な症状の治療効果を強化するもの
2. 病に付随する症状の治療を目的とするもの

 
佐薬(さやく)
 

以下の3つの種類があります。
1. 君薬・臣薬を助ける
2. 君薬・臣薬のもつ副作用や毒性を抑える
3. 病の症状がひどく、君薬に反発してしまうのを緩和するために病と同じ性質の生薬を配伍して体になじみやすくする

使薬(しやく)
 

以下の2つの種類があります
1. 方剤の効果を病の存在する経絡に導く
2. 君・臣・佐薬を調和する

君薬を主体として、それぞれの役割に沿った生薬を組み合わせていくことで最大限の効果を得たり、副作用を最小限にしたり、様々な症状に一つの漢方薬で対応可能となったりするのです。

加減処方

漢方の方剤構成は原則に従って定められていますが、体質や年齢・住んでいる場所の気候などに合わせて生薬の組み合わせや量を調整して使用することもあり、それを加減処方といいます。

こういった基本ルールを踏まえて、各方剤について一つ一つ解説していきます。

キュティア老犬クリニック
獣医師 横山 恵理