Vol.146

老犬の脳トラブルにも有効な五苓散(ごれいさん)

公開日:2024.05.31
五苓散は脳のトラブルにも効果があります

五苓散はどんな時に使うの?

利水滲湿薬(りすいしんしつやく)の代表方剤である五苓散は体の水分バランスを調節して、むくみをとったり、めまいや頭痛、吐き気、水様性の下痢などに効くとされています。

キュティアで五苓散を処方する犬の症状

・てんかん発作、けいれん
・脊髄空洞症、水頭症
・緑内障
・クッシング症候群による腹囲膨満
・心臓疾患により体に水が溜まりやすい(肺水腫や胸水、腹水の貯留)
・のぼせや興奮しやすいなどの脳トラブル
・高齢になり運動不足により気、血、水の巡りが悪くなっている
・太っていて足腰が重ダルイ

などがあります。

しかし、これらの症状に必ず五苓散が合うというわけではないので注意が必要です。

五苓散を単体で使うこともありますが、その犬の「証」によって肝気が上昇しやすい場合は肝気を降ろす漢方薬を併用したり、脾虚が強く、水が停滞している場合は補脾作用のある漢方薬を併用したりと様々です。

五苓散の構成生薬は微妙に異なる!

五苓散を構成している生薬はとてもシンプルで以下の五つの生薬からできています。

1. 沢瀉(タクシャ)、基原:サジオモダカ

利水作用のある沢瀉(タクシャ)沢瀉は君薬と言われるメインの生薬で、直接膀胱に達して利水滲湿に働きます。湿熱をとるので膀胱炎などの治療にも使われます。冷やす性質がある沢瀉の配合量が最も多いため、温める白朮や桂枝が入ってはいるのですが冷えやすい体質の犬や老犬は冷えないように注意が必要です。

2. 猪苓(チョレイ)、基原:チョレイマイタケ

猪苓(チョレイ)は殺菌作用があります猪苓は利尿作用の他に、黄色ブドウ球菌や大腸菌を抑制する働きもあります。そのため膀胱炎の治療によく使われます。

3. 茯苓(ブクリョウ)、基原:マツホド

茯苓(ブクリョウは様々な漢方に配合されています茯苓は利水滲湿の他にも健脾作用と安神作用があり、様々な漢方に配合されています。

4. 白朮(ビャクジュツ)、基原:オケラ又はオオバナオケラ

白朮(ビャクジュツ) は補気健脾の作用があります補気薬の白朮は補気健脾の他に燥湿利水作用があります。脾気虚による食欲不振や冷えを改善します。

5. 桂枝(ケイシ)、基原:ケイ

桂枝は温めて発散をさせる作用があります桂枝は温めて発散をさせる辛温解表薬(しんおんげひょうやく)で風邪の時などにも使われます。桂枝は湿を温化し、茯苓や白朮と一緒に配合することで脾や膀胱の気を温めて、利水滲湿に働きます。

ここで注意が必要なのはメーカーによっては白朮ではなく、祛風湿薬(きょふうしつやく)の蒼朮(ソウジュツ)が配合されているという点です。蒼朮にも燥湿健脾作用はあるのですが補気作用は白朮の方があります。蒼朮は風邪(ふうじゃ)を取り除く働きがあるので関節痛や頭痛、目のトラブルに効きます。

脾胃が弱っていて補気が必要な場合は白朮が配合されているものを、湿によって関節が重ダルイ、頭が重いなどの「風」症状がある場合は蒼朮が配合されているメーカーを選ぶと良いでしょう。

どうして五苓散は脳にはたらくの?

漢方薬は、永い中国の歴史の中で経験に基づきその効果が検証されてきました。漢方薬の多くは現代医学の薬物とは異なる作用も多く、作用機序が解明されていないものもあります。

水分代謝の調節作用を持つ五苓散は利尿作用の強い方剤ですが、西洋薬の利尿剤のように血漿中の電解質バランスへ影響することが少ないと言われています。これはつまり、西洋薬の利尿剤とは異なる作用機序によって尿量を増やしているということです。

また五苓散は西洋薬の利尿剤のように脱水していてもどんどん体から水分を出してしまうようなこともなく、水分バランスを整えてくれるため、腎臓の悪いコにも使いやすい利水薬なのです。

五苓散はどのようにして水分バランスを調整している?

近年、細胞膜の水透過性を調節するアクアポリンと呼ばれる水チャネルが存在することがわかりました。五苓散はこのアクアポリンという水チャンネルを抑制する働きがあります。

アクアポリンは全身あちこちに存在するのですが、中でも脳のアクアポリンを阻害する働きが強く、脳の浮腫の改善に役立ちます。そのため、五苓散は人の低気圧頭痛やシニア犬、老犬のてんかん発作や、のぼせなどの脳トラブルにとても有効なのです。

このような働きをする西洋薬は今のところないと言われています。

漢方薬だけでなく、食養生、運動、鍼灸治療なども合わせて「湿」に負けない体づくりをしましょう。

それではハッピードックライフ♪

関連コラム:
梅雨時期の老犬に起きやすいトラブルと対処法
https://cutia.jp/jyuuishi-inu-neko-column/inu-sinkyu-kanpou/2023-06-02

キュティア老犬クリニック
獣医師 佐々木 彩子
  • 獣医師コラムトップページへ