東洋医学でも筋肉は健康の要
ロコモティブシンドローム予防から始まり、折に触れその重要性を書いてきた「筋肉」。東洋医学的に見ても心身のバランスを整えるためにとても大事な役割を果たしています。
筋肉が属する臓は?
東洋医学の基本となる「五臓」について解説する図には、「肝」のところに「筋」と書いてあることが多いのですが、これは「筋(すじ)」つまり、「靭帯」のことを示しています。筋肉本体は「脾」の「肌肉(きにく)」が該当するのです。肌肉は「皮膚の下の肉」である真皮と筋肉を指した言葉です。
脾主統血
五臓の「脾」は、食べたものを栄養に変えて血を生み出すだけでなく、循環させたり、然るべき箇所に行きわたるようコントロールする役割も担っています。筋肉がしっかりついていることはこの脾臓の仕事を充実させることにつながります。そうして血が滞りなく行きわたることで、「肝」をしなやかにしてのぼせを起こりにくくしたり、「心」を養って精神不安や不眠を改善することができるのです。
また、血は「陰」に属するので、以前コラムに書いたような「腎陰」が少なくなってしまったときにも補佐のような役割を果たすこともできます。
ハイシニアになってもあきらめないで
そんな大切な役割をしている筋肉ですが、愛犬が10歳を超えたころから「もう年だから…」と維持することを諦めがちになってくる飼い主さんも少なくありません。しかし、体に合ったご飯を食べてコツコツおうちケアを続けていれば、プリプリの筋肉を取り戻すことだってできます。今回は、15歳を超えても筋肉をしっかりつけることができたわんちゃん達をご紹介します。
18歳になっても見事な復活!
13歳の時、膀胱腫瘍ができたのがきっかけでキュティアを訪れたりゅうのすけ君。手術と投薬で緩解した後も月に一度通院しつつ、山登りに行ったりおうちのお風呂で泳いだりとコツコツ筋肉ケアを続け、とても楽しいハイシニアライフを送っていました。
そんな状況が一変したのが18歳の誕生日を迎える11月。突然体調を崩しかかりつけ病院を受診したところ、再び膀胱に腫瘍ができていることが発覚したのです。そこからは背中や顔に皮膚炎が起きたり、ぼんやりしたような行動が増えたり、目が見えにくくなったり…、と一気に老け込みお尻や後肢の筋肉も一気に落ちていってしまいました。
年齢のこともあって手術を行わず、皮膚ケアや温活、鍼灸や整体といった今まで積み重ねてきたことを少し強化したケアを続けることになったりゅうのすけ君。年が明けて皮膚炎が治ってきたころから体調や食欲が戻り始め、一度落ちてしまった筋肉も再び取り戻すまでに回復することができました。
りゅうのすけ君ほどの超復活劇まではいかなくとも、ハイシニアに入ってきたころから飼い主さんがコツコツと愛犬のロコモケアを続けてきていると、いざ体調を崩した時でも回復をするのがとても早くて驚くことが少なくありません。
慢性腎不全でもあきらめない
トイプードルのはなちゃんがキュティアを訪れたのは15歳の時。膵炎などのトラブルを繰り返すようになってきていたことと、先住犬のサンドラちゃんと始めた棒灸をとても気に入ってくれたことがきっかけでした。
はじめは腰も背中もとても固くお尻も下がり気味で、通院を始めて少し経った頃からは腎不全も併発してきたのですが、鍼灸とマコモに重曹点滴を加えたケアを続けていくうちにすっかり食欲を取り戻し、同居の若いラブラドゥードゥル達と別荘のお庭を走り回るまでに回復してきたのでした。
そして、17歳を迎えるころに大好きな「鯖ごはん」に出会ったことでさらに体力が向上!筋肉だけで体重が600gも増え、毛はよりツヤツヤになり、お尻や後肢の筋肉はプリップリの状態になってきたのです。「美味しく食べられるご飯」の力に驚かされる結果となりました。
それではハッピードックライフ♪
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獣医師 横山恵理