Vol.151

身体の土台を整え穏やかな生活を送るボーダーコリー

公開日:2025.04.03
身体の土台を整え穏やかな生活を送るボーダーコリー今回は貧血や関節トラブルと付き合いながらも楽しく過ごしているボーダーコリーのギャンゴくんをご紹介します。前十字靭帯の手術を乗り越えてしっかり自分の足で歩いているだけでなく、15歳を目前としたころに新たに取り入れた腸活でさらに毛ヅヤや便の状態が改善して穏やかに過ごしています。

様々なトラブルが発生!

手術は終わったけれど

ギャンゴくんが初めてキュティアを訪れたのは12歳の秋。元々は14歳の先住犬・Poco(ぽこ)ちゃんの加齢に伴うトラブルケアでご予約されていた 枠でしたが、あまりにも体調がすぐれないからと先に診察を行うことで来院しました。

その年の7月に行った右前十字靭帯の手術後、退院してから2週間の間、ほとんどご飯が食べられずにすっかり痩せてしまったとのこと。その後も軟便が続き、食欲が回復しても体重は回復できずにいました。

足腰だけでなく

ギャンゴくんはまた、手術時の検査で腎機が低下していることがわかり、療法食やサプリメントでのケアを取り入れたもののあまり改善せず造血剤が必要なほど貧血も起きてきてしまいました。もともと僧帽弁閉鎖不全症もあったため、さらに疲れやすく、少し動くとハァハァと息が上がってしまうことが目立つようになってしまい術後のリハビリがうまく進められないとのご相談もありました。

土台の回復が大事

土台の回復が大事

腎虚より脾虚のほうが

関節トラブルや貧血を起こすほどの慢性腎不全に僧帽弁閉鎖不全。問診表に記載されている症状だけで判断すると、東洋医学的には加齢による腎の衰えがすべての原因のように感じられます。

しかし、実際にギャンゴさんを診察してみると、意外にも足はしっかりと踏みしめることができ、お尻もちゃんと上がっていました。その反面、背中の筋肉が落ちて背骨が浮きあがり、お腹に力が入らず下腹部が下垂してしまっていました。これは以前コラムで取り上げた「脾虚」の症状に該当します。

その他、もともと軟便になりやすいという体質や、口腔内粘膜や肛門周りの浮腫み、ご飯を食べても太れないという脾虚と考えられる症状がいくつも散見されました。もちろん膝の前十字靭帯損傷や腎不全など「腎虚」の症状もありますが、それ以上に「脾虚」の症状の方が深刻な状態ではありました。

貧血にも腎と脾両方が関わる

腎不全から貧血が起こしたと考えられるギャンゴくんですが、サプリメントや皮下補液などの効果もあり、血液検査上の腎臓の数値は実はそこまでひどい貧血を起こすほど悪くはありませんでした。

東洋医学的に貧血は血が足りない「血虚」という状態ですが、これは脾胃が弱って食べたものを身体の活動エネルギーや血肉に変えていく「運化」の力が足りないときにも起こると考えられています。また、脾胃の消化吸収活動を行う力は腎の陽気によって助けられています。

今回のギャンゴくんは、もともと少し「脾気」が弱い体質であったところに加齢に伴う腎陽の弱りが重なり、手術からの身体の機能回復を賄いきれないほどの「脾虚」を起こしてしまったものと考えられました。

土台となる「脾胃の運化」を整える

腎機能や心臓のケアにしても、術後の身体機能回復にしても、まずは食べたものを消化吸収するための「運化」機能が働かなければ始まりません。そこで、まずはリラックスを目的としたごく弱い刺激での鍼灸治療とおうちでの火を使わないお灸でのケアを行い、フードも脂質が多く消化に負担のかかる腎フードから、お腹にやさしく、かつリンの含有量も多くない消化しやすいフードに変えてもらうことにしました。また、長期にわたって服用していた、消化の妨げとなる制酸剤も少しづつ減らしていくことにしました。

貧血とうまく付き合うボーダーコリー

貧血とうまく付き合う

少しづつ運化機能をとりもどす

2・3週間ごとの通院で毛ヅヤをとりもどし少し体調が上向きになってきたのでもう少し積極的な東洋医学ケアを行うことにしました。ギャンゴ君の場合、脾胃の運化機能には腎の陽気の手助けが必要な反面、「補腎」の漢方薬は胃腸の動きを邪魔してしまう側面がありました。

そこで初めはホモトキシコロジーやプラセンタといった水鍼治療で補腎を行い、漢方薬はお腹を温める「健脾」効果のあるものを使用することにしました。また、補血効果の高い棗(なつめ)をご飯に取り入れてもらうことにしました。

同居犬ロスがストレスになり貧血が悪化

コツコツとケアを続けていたギャンゴ君ですが、先住犬のPocoさんが亡くなったショックにより嘔吐を繰り返すようになり、造血剤を打っても貧血が改善しないようになってしまいました。

東洋医学ではストレスは「肝」のうつ熱となってライバルである「脾」を弱らせると考えます。そこで、「脾」の「気」だけでなく「血」も補うことでストレスを乗り切ることにしました。

脾気の安定により貧血とうまく付き合えるように

同居犬ロスからも回復し、お腹の薬の併用が必要ながらも体調が安定してきたころから、毎月必要だった造血剤が2か月に1度と使用の間隔をあけられるようになってきました。毛ヅヤもぐっと良くなり、肛門周囲の粘膜の腫れもかなり改善して、穏やかにシニアライフが送れるようになりました。

お灸よりレーザー治療があっている場合も

様々なおうちケアも取り入れてもらってはいましたが、どうしてもじっとしていることが苦手なギャンゴ君。膝のケアとしてのお灸をご家族が行うことは難しく、お灸に比べてサッと治療の終わるレーザー治療を取り入れていただくことになりました。

腸活で下痢止め不要に

仔犬が家にやってきた

キュティアに通い始めて2年経った夏、元気な仔犬が家族に加わったことで家の中での刺激が増え活動量も増えたギャンゴ君ですが、気持ちが若返る反面、体力がついてこずに下半身のトラブルが目立つようになってきました。

腸活サプリメントで土台作り

腸活をためしてみる

下半身トラブルには補腎薬!と言いたいところです。しかし脾虚がベースにある上に心臓などいくつかの絶対継続しなくてはいけない薬がある分これ以上薬を増やしたくありません。なので基本に立ち返り、土台作りとなる食物繊維とオリゴ糖のシンプルな構成の腸活サプリメントを取り入れてみることにしました。

すると効果てきめん!毛ヅヤがよくなっただけでなく色も濃くなり、何年も継続して服用していた下痢止めの薬がなくてもお腹の調子が安定するようになったのです。また、食べたものをきちんと吸収できるようにもなり体重も増えてきたのです。

15歳を過ぎ、1時間かかるまとめて一回の施術では疲れが出てしまうようになってきたので、整体と鍼灸治療交互に通院するようになったギャンゴ君。加齢に伴い立ち上がりなど少しづつやりにくいこともでてはいるものの、お散歩で歩くことができ、貧血対策の造血剤も2か月に1度のまま維持をして穏やかな生活を送れています。

それではハッピードックライフ♪

キュティア老犬クリニック
獣医師 横山恵理
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