先月、日本臨床獣医学フォーラムがオンラインで開催されました。急性腎障害と慢性腎不全についてのプログラムがあったのですが、西洋医学の考え方も少しずつ変化してきているなと感じました。
タンパク質制限にも変化が
まず1つは、腎不全に対する食事の考え方です。以前でしたら少しでも尿素窒素(BUN)やクレアチニンの数値が上昇したら腎臓の75%以上が機能していないので、タンパク質を制限した食事を与えた方が良いというのが一般的な考え方でした。
しかし、腎不全の初期段階からタンパク質を制限してしまうと、筋肉が衰え、血流が悪くなってしまい、結果的に心臓や腎臓に負担がきてしまいます。そのため、腎臓病用の療法食のタンパク質量も見直されつつあります。
リンの吸着はサプリメントで
腎臓病の初期では食事中のタンパク質を制限することよりも、腎機能が衰えると体にたまりやすいリンを制限することの方が大事なのです。後期ではリンだけでなく多少のタンパク質制限が必要になってきます。食事だけでリンの上昇を抑えられない場合はリンを吸着する薬やサプリメントを与えると良いでしょう。
そのあたりの切替えは血液検査の数値や全身状態によってもかわってくるので、かかりつけ医に相談しましょう。
良質なタンパク質はやはり大切
キュテイアでは以前から腎臓の悪いコも筋肉維持のためにタンパク質を制限し過ぎないで、と患者様にお話してきました。
ドライフードに含まれるタンパク質は高温加熱されていて、タンパク質が変性し筋肉に変換されにくいため、ドライフードは腎臓病用の療法食にして、良質なタンパク質(人が食べる肉や魚)をトッピングするのがおすすめです。
療法食を食べない場合は無理して与える必要はありません。市販のシニア用フードでリンの含有量が低いものを探したり、手作りごはんにしても良いと思います。
「尿素窒素の数値が上がってしまったので、お肉の量を少し減らしたら足も細くなってしまってなんとなく元気もないんです。なのでお肉の量をもとに戻したらまた元気になりました!」
といった話をよく耳にします。やはり身体をつくるタンパク質は大切ですね。
皮下補液の本来の目的は
2つ目は皮下補液に対する考え方です。脱水をしているからといって多量に皮下補液を行っても脱水は改善されません。急激な体液増加により心臓に負荷がかかってしまいます。皮下補液量の目安は体重1kgあたり10~30mlです。腎臓の数値や心機能、食欲などを考慮して判断します。
皮下補液をたくさんしても細胞内のお水は増えないので、どちらかというと食欲低下を防ぐ、食欲低下によるさらなる脱水を防ぐというのが目的になります。脱水の改善には口から水分をとることが重要です。経口補水液やペット用イオン水などはより吸収されやすいです。
また、ドライフードを与えていたらふやかしてあげたり、ウェットフードにかえることで食事の水分摂取量を増やすことができます。「ごはんを食べない=脱水」と思ってもよいくらい食事による水分摂取が大切なのです。療法食を食べないなら無理してあげる必要がないと言ったのはそのためでもあります。
腎臓病とうまく付き合う
どちらもごく基本的なことではありますが、大切なことを再確認できたセミナーでした。
犬にも猫にもとても多くみられる腎臓病。初期から上手くつきあっていけば、尿毒症などの症状がでることなく寿命をまっとうできるコもたくさんいます。
そのためにも、食事療法と皮下補液、鍼灸治療や漢方薬による治療をうまく融合していきたいと思います。
それではハッピードックライフ♪
関連記事:
重度の腎不全でも元気なチワワ
https://cutia.jp/jyuuishi-inu-neko-column/inu-rihabiri/2020-04-19
獣医師 佐々木彩子
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