Vol.91

ガンと闘うスピッツ

公開日:2018.05.19

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皆さま こんにちは♪
獣医師の佐々木彩子です。

この1ヶ月は半袖で過ごせる位
暑い日もあれば
ストーブをつけようか迷うほど
寒くなったりと
寒暖差で体調を崩しがちな
ワンちゃんが多かったです。

ようやく春の陽気も
落ち着いてきたのですが

今度は少しずつ梅雨の湿邪が
入り始めてきています。

先月お話したように
「肝」が弱ると「脾」にも
影響が出てきます。

そこに「脾」の天敵である
湿が入り込んでくると
さらなる負担になります。

梅雨の時期は利水作用のある
ハトムギやトウモロコシのヒゲが
おすすめです。

煮出してお水の代わりに飲んだり
フードにかけてごはんと一緒に
摂ると良いでしょう。

さて今月はガンと闘っている
12歳のスピッツの女の子
ぴゅあちゃんのお話をしです。

ぴゅあちゃんが
初めてキュティアに来たのは
もう4年も前のこと。

当初は先住犬のお姉ちゃんと一緒に
付き添いで来ていました。

人が大好きで
来るたび首と腰をくねらせて
しっぽをブンブン振って
喜んでくれました。

若い頃から夏になると
時々おもらしをしちゃったり
頚や膝が痛くなることがあり
時々鍼灸治療でケアをしていました。

昨年は大好きだった
お姉ちゃん犬が旅立ち

またしばらくして
新しい子犬がお家に来たりと

ぴゅあちゃんにとって
環境の変化がものすごくあった年でした。

そのため昨年は
6月頃からお腹の調子が悪いのが
しばらく続きました。

これもまさに先ほどお話した
ストレスから「肝」が弱り
胃腸にあたる「脾」も弱ってしまった
というケースです。

食ムラもひどくなり
「脾虚」が続いていたため
毛もツヤがなくなり
パサパサになって
顔つきもドンヨリ
元気がなくなってしまいました。

秋頃にはようやく体調も安定してきて
本来の元気なぴゅあちゃんに戻り
つつありました。

しかし年明けに
おでこのあたりがコブのように
出っ張っているのに気づき
慌てて大学病院でCT検査。

結果は
おでこにある前頭洞という場所の
扁平上皮癌でした。

大学病院では手術は適応外で
放射線治療もやっても
余命は数ヶ月との判断でした。

飼い主さんは
できることならなんでもしてあげたい
と週1回の放射線治療を選択されました。

犬の放射線治療は
毎回麻酔をかけなければなりません。

キュティアでは
麻酔による負担やストレスを
少しでも楽にしてあげる緩和ケアと
ガンの進行を抑制する
ホモトキシコロジーの注射薬をツボ
に打つ水鍼治療を行うことにしました。

ガンと闘う上で
大事な指標となるのが
白血球の分類の中の
好中球とリンパ球の割合
(G/L比)です。

好中球の数÷リンパ球
の数が3に近いほど良く
5を超えると予後が悪いと
いわれています。

体がストレス状態にあると
ガンと闘ってくれるリンパ球の数が
少なくなってしまうため
この数値が高くなってしまいます。

ではこのリンパ球を増やすためには
どうしたら良いのでしょうか。

もちろんストレスをかけない
ことも大事なのですが
お灸をすることで
リンパ球が増えるのです。

前半身の腫瘍には手三里
後半身の腫瘍には足三里
というツボの灸がいい
と言われています。

ぴゅあちゃんの場合
放射線治療を始める前のG/L比は6

4回の放射線治療を終えた後は
10を超えていました。

このままではまずい!

と自宅で毎日三里と腎のツボに
お灸をしてもらいました。

そして
ガンに効くとされる漢方薬も
飲み始めたところ
1ヶ月でG/L比が3まで
下がったのです☆

放射線治療の副作用か
腎臓の数値が少し高めで
食べ物の好みのムラはあるものの
お腹の調子もよく
今は元気に過ごしています!

何よりも
ご家族が前向きにぴゅあちゃんに
向き合っていることが

ぴゅあちゃんの元気の
秘訣だと思います。

先日のGWは
一緒に旅行へ行ってきました~!

とうれしそうな顔を見せてくれた
ぴゅあちゃん

いつもより体調もとても良さそうでした。

このまま少しでも長く穏やかな
日々が続きますように☆

それではハッピードッグライフ♪

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