VOL.48

犬の椎間板ヘルニアの鍼灸治療

公開日:2014.10.18  / 最終更新日:2023.05.28

過ごしやすい季節にはなりましたが、台風が来たり気温の上がり下がりが激しい日が続いています。わんちゃんは体調はいかがですか。今回も犬の鍼灸治療についてお話します。

五臓六腑って?

前回・前々回は「腎」「肝」という臓が登場しました。「五臓六腑(ごろうろっぷ)」という言葉を聞いたことはありますか?

五臓とは「肝・心・脾・肺・腎」
六腑とは「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」

というところですが、実はそれぞれ関係する季節が決まっています。

春は「肝」
夏は「心」
長夏(日本でいう梅雨のような季節)は「脾」
秋は「肺」
冬は「腎」

今は秋で、空気が乾燥してくると「燥邪」という邪気がからだに入りやすい季節です。すると潤いを好む「肺」の不調が起きて、皮膚が乾燥したり喘息が起きたりします。

また冬に向けて寒くなっていく時季ですから、関節や足腰が弱い子は要注意です。からだに「寒邪」が入ってくると、それが関節の痛みや足腰の重さにつながる可能性があります。

このようにわたしたちは自然の影響を受けながら暮らしているのですね。

足腰といえば、キュティア老犬クリニックには椎間板ヘルニアの治療のために鍼灸治療に通っていただいている患者さまもいらっしゃいます。その中の2頭をご紹介させていただきます。

腰の椎間板ヘルニアに車いす

ちぇりぃちゃんは5歳のミニチュア・ダックスフントの女の子。病気や怪我などほとんどなく元気に過ごしていましたが、ある日突然お出かけ先で後ろ脚に力が入らなくなりました。急いで病院に連れて行ったところ、腰の椎間板ヘルニアであることが発覚。

注射薬や飲み薬での治療と併せて手術も勧められましたが、飼い主様のご希望でキュティアで、車椅子をつくることになりました。そして一緒に鍼灸治療も始めることに。1週間経つごとにはじめ全く力の入らなかった後ろ脚に力が入り始め、下がったままのしっぽも振れるようになってきました。

前回の鍼灸治療では、後ろ脚で立ち上がったり前後に動かす動作が増え、本人もますますやる気の出たお顔立ちでした。^^おうちでもリハビリをしてもらったり、車イスを上手に併用してご家族にできることを一緒にがんばってもらっています。

がんばれ ちぇりぃちゃん!

頸の椎間板ヘルニアを鍼灸治療で

ピートくんは11才のパグの男の子。頸の椎間板ヘルニアの手術後にしばらく調子がよかったけれど、また前の脚のナックリング(手の甲がひっくり返って地面についてしまう状態)が強くなってきて後ろ脚も弱ってきていました。

鍼灸治療を始めたところ、立ち上がりがスムーズになって、足取りもしっかりしてきたとのこと。最近では越えられなくなっていた障害物を乗り越えられるようにもなりました。

飼い主様は、
「最初の頃よりも元気が出て目つきが生意気になった」
とおっしゃっています(笑)

確かにお顔つきがはじめよりも キリッ としていますね!^^また ドライアイで乾燥気味だった目も潤ってきて、以前より点眼する回数が減ってきました。これからも元気なシニア期を過ごしてほしいですね^^

鍼灸治療では、「気」や「血」の流れを良くしてあげることで痛みを緩和したり麻痺を軽減したりします。その子が持っている力を引き出して、それを後押ししてあげる治療です。

治療効果はその子の病歴や体力などにもよりますが、何よりストレスでいっぱいだったり、緊張しきっていた子達がリラックスしてウトウトし始めますのでまずそれが治療の第一歩です。

どんな治療法でもそれぞれの良いところを活かしながら、その子にとって一番良い方法を探していきたいですね。

それではハッピードッグライフ♪

キュティア老犬クリニック
  獣医師 青木志織
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