Vol.104

犬の四診と漢方薬

公開日:2019.06.20  / 最終更新日:2020.04.27

皆さま こんにちは♪

獣医師の横山です。

梅雨に入りじめじめとした日が
続くようになると

私は「水滞」という
むくみをため込みやすい体質のため

本当でしたら「湿」につながる糖質を
控えなければならないのですが

大好きなビールがおいしい季節だし
これまた大好きな白米を
子供達がおいしそうに
目の前で食べてくれるし

でなかなか量を減らことができません。

そこでお味噌汁にハト麦パフをいれたり
ベビーコーンを蒸し焼きにして
ひげごと食べたりと
利尿作用のある食材を
意識して取り入れるようにしています。

また
「湿=水分」は重く下半身に
溜まりがちなので

ボクササイズやTRFのDVDを
見ながら大きく身体を動かし

半ば強行的に気を巡らすことで
湿の停滞を阻止するようにもしています。

このように
その季節によって必要な食材を変えていく
「薬膳」の考えは随分と
認知されるようになってきていますが

病気の治療に用いる「漢方薬」も
たとえ同じ病状であっても
季節によって変わることがあるのです。

例えば
加齢に伴う後ろ足の弱りによく処方される
牛車腎気丸や六味丸といった
「補腎薬」ですが

「腎」は五行でいえば「水」に属します。

そのため
梅雨のジメジメとした季節に
処方してしまうと

ただでさえ衰えて動きが少なく
「湿」が停滞しやすくなっている身体に
「水」の追い打ちをかけてしまい

病状が改善しないどころか
下痢や皮膚炎など他の病気を
作り出してしまうこともあります。

こういった場合は
梅雨の間は「補気薬」で
お腹に力を入れやすくすることで
体幹を強めたり

「除湿薬」で
足がむくまないようにするなど

他の漢方薬に置き換えることで
対応していきます。

もちろん
梅雨の季節であっても
「補腎薬」を必要とするワンコもいます。

それらを判断するのに東洋医学では
「四診」を用いて診察します。

四診には4つの診察方法があります。

1. 望診
見た目の状態を観察します
代表的なのが舌・被毛の色や状態
の観察です

2. 聞診
鳴き声や呼吸の音を聞く
口臭などの臭いを嗅いでみる

3. 問診
愛犬さんの様子を飼い主さんから聴く

4. 切診
脈をとり強さ・早さ・浮き沈みなど
から全身の状態を把握します

五感をフル回転させるんですね。

そして「陰陽五行論」
に照らし合わせながら診察を行い
処方する漢方薬などを決定します。

陰陽五行論は
「陰陽」の概念と「五行論」とを
融合させたもの。

陰陽とはすべての事を2つの対とします。
例えば
「下半身と上半身」
「腹部と背部」
「血と気」
「抑制と興奮」
「虚証と実証」
「寒証と熱証」
など。

これらのバランスをはかるために
陰過ぎるときは陽性の薬を
陽過ぎるときに陰性の薬を

といった具合です。

時々お電話やメールで

「うちの子慢性腎炎と診断されました」
「良い漢方薬はありますか?」

といったお問い合わせをいただきます。

でも

「これこれが良いですよ」と

さっとお答えできないのが
東洋医学の「さが」なんですね。

それではハッピードッグライフ♪

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