
今月は糖尿病と闘っているわんちゃんのご紹介です。11歳のトイ・プードルのモモちゃん女のコ。
多飲多尿という症状が突然でた
2015年1月からお水をたくさん飲んでオシッコもたくさんする、多飲多尿という症状が突然現れました。検査をしたところ副腎が過剰にステロイドホルモンを出してしまう副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)であることがわかり、お薬を飲んで治療を始めました。
糖尿病も患っていた
ところが5月の初旬に寝ながらおもらしをしてしまいました。今までそんなことはなかったのでおかしいと思った飼い主さんはすぐに病院へ行き検査をしました。すると血糖値がものすごく高く糖尿病も患っていたのです。
モモちゃんがキュティアに来たのはその10日後のことでした。モモちゃんは少しぽっちゃり体型で身体に「湿」がたまっている様子でした。
過去のお話をお伺いすると時々軟便になったり、嘔吐をしたりということが以前からあったようです。これは「脾」(西洋医学で言うところの胃腸)が弱っているということになります。
また生まれつき右膝が弱く、副腎皮質機能亢進症でおもらしをするといった症状から「腎」の弱りもあることがわかります。
中医学では膵臓という概念はありません。では糖尿病はどのように捉えたらよいのでしょうか。中医学では病名治療はしません。なので糖尿病という病気がどのような体質によって起こるのかまたどのような体質になるのかを考えます。
糖尿病でみられる多飲多尿、多食症状を中医学では消渇(しょうかつ)といいます。消渇はまず肺の熱によって喉が渇き、その熱が胃に伝わり空腹感をもたらすとともにお水をたくさん飲むようになります。
そしてそれが腎へ行くと多飲多尿となり、尿漏れを起こしたり白内障になったりします。
モモちゃんの場合は前述のようにもともと「脾」と「腎」の問題があります。
糖尿病による酸性体質を鍼灸と漢方で調整
また糖尿病では体がどんどん酸性体質になっていきますので、それらの調節を鍼灸と漢方で行います。猫ちゃんの糖尿病の場合鍼灸と漢方薬による治療で、インシュリン注射が必要なくなるほど回復することもあります。しかし、わんちゃんの場合はインシュリン注射をなくすのは難しいようです。
ですが併せて治療していくことで血糖値も安定するようになり、糖尿病によって引き起こされる白内障や腎不全などのリスクを抑えることができます。
モモちゃんは最初の3か月は1週間に1度のペースで治療に来てくれました。鍼灸治療に加えて腎の漢方薬とマコモを飲んでいます。マコモも酸性体質の改善にとてもいいのです。
おもらしが減って治療効果が現れる
治療していくうちに段々とおもらしの回数が減っていき飲水量も減っていきました。そして治療開始から1ヶ月半程度でおもらしすることはなくなり血糖値も安定しました。その後も2週間に1度鍼灸治療をしています。
秋冬や季節の変わり目に少し咳をするようになりましたが鍼灸をやると治まり、また2週間たつと咳をするようになるということで、2週に1度の治療ペースが合ってるんだねーなどと飼い主さんと話しています。
糖尿病の治療に来ているのですが、足腰もとてもしっかりとしてすごく元気ですとおっしゃってくれています。
昨日も元気に治療に来てくれました♪
鍼灸治療は「この病気を治す」のではなく全身の治療ができるのが魅力の一つですね!
それではハッピードッグライフ☆
獣医師 佐々木 彩子