東洋医学は「証」が要

東洋医学の「証」をスタンダードプードルに応用

スタンダードプードルのセラ君が初めてキュティアを訪れたのは2018年12月。

10歳を過ぎた2017年頃から後ろ足が衰え始め、ちょっとした段差でもつまづくようになってしまったということで来院されました。また、全身にイボができやすく、最近の血液検査で肝臓の値が高くなってきたとのことでした。

瘀血(おけつ)が大きくかかわる

イボは東洋医学では「瘀血」という、「氣」の巡りの停滞が引き起こすものと考えられています。この「瘀血」が悪化すると、のびのびと自由に広がりたがる「肝」の疲れと密接に関わってきます。身体の状態を確認たところ、全体的に硬く、舌の色がくすむ「瘀血」がとても顕著に表れていました。

スタンダードプードルはとても賢くやさしい性格のため、気を使い過ぎて「氣」の巡りが滞ってしまうことがあります。また、他の犬に比べストレスを感じてしまう場面が多い傾向があり、そのストレスが「肝」の鬱熱(うつねつ)となり蓄積してしまいがちです。

セラくんも、気疲れからか、トリミングの後に軟便になってしまうことが多かったようでした。足のつまづきも加齢に伴う「腎」の弱りだけでなく「瘀血」も大きくかかわっていると判断し、鍼灸と薬膳トッピングによる「補腎」と、整体と棒灸による気の巡りの改善をおこなうことにしました。

「気逆」による咳が

定期的なケアにより快適に過ごせるようになってきていたセラくんでしたが、2019年春から肝臓の数値がさらに上がり始め、6月には右後肢の指に形質細胞腫ができてしいました。形質細胞腫とは、リンパ球の一種であるBリンパ球が分化した、形質細胞に由来する良性腫瘍です。東洋医学的には、リンパのトラブルは「肝」の熱が「脾」を犯してしまった時に起こりやすいと考られていて、脾気を補い肝の巡りを改善する治療を行うことが多いです。

セラくんの形質細胞腫は良性で手術しやすい場所ということもあり、西洋医学での対応を主体としました。そして、キュティアでは紅豆杉のお茶で免疫バランスを調整し、コスモスラクトで病院通いのストレスによる軟便の改善をはかるべく様子を見ることになりました。

しかし、西洋医学の病院での処置が苦手なためストレスが蓄積し「肝」の熱が強まってしまいました。そのために、リンパ球が減少し気の循環が乱れる「気逆」のため咳が増えてしまったのです。

抑肝散加陳皮半夏が効いたよ~

2020年1月には胸などにも形質細胞腫が転移し、多発性骨髄腫を疑った西洋医学の病院からは骨髄穿刺による検査も提案されました。しかし、セラ君の年齢とこれまでの経過から飼い主さんは積極的な治療は行わないことにしました。

それまでは西洋医学の薬や紅豆杉茶も飲んでいたこともあり、薬ばかりになってしまうのを避けるために漢方薬の使用は避けていました。が、やはり「肝」の熱からくる瞼の軽度な麻痺症状が現れたため、2月から抑肝散加陳皮半夏の処方を開始したところ、形質細胞腫も咳もなくなり、すっかり元気をとりもどしたのでした。

抑肝散加陳皮半夏という漢方薬は、西洋医学的には認知症改善薬と使用されることが多く、補中益気湯や十全大補湯のような抗腫瘍作用は確認されていません。

やっぱり「証」が大切!!

しかし、「脾」を犯してしまっている「肝」の熱を取り除くという東洋医学の『証(しょう)』に基づく処方により今回のような結果がもたらされたものと考えられます。漢方薬の処方は「症状名・病名」ではなく「証」に基づいて処方することで真価を発揮することを改めて思い知らされる結果となりました。

まだ完全に「脾」の調子が万全ではないため、梅雨入り前の「脾」の湿熱のトラブルが起きる時期になり今度は溶血性貧血をおこしてしまいましたが、鍼灸ケアもあり順調に回復してきたセラくん。このまま持ち前の甘えん坊っぷりでご家族を笑顔にしてもらえたらとおもいます。

それではハッピードッグライフ♪

2020/05/23 更新
キュティア老犬クリニック
 獣医師 横山恵理
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