骨肉腫ってどんな病気?
犬の骨腫瘍の中でも最も発生率が高いのが骨肉腫です。骨肉腫は大型犬の四肢の骨で発生しやすいガンですが、小型犬~中型犬では四肢よりも体幹の骨に発生する割合が高くなります。
骨肉腫は腫瘍細胞が血管を介して全身に転移する可能性が非常に高く、診断時には約9割の症例ですでに肺や他の骨への転移が起こっているとも言われています。
骨腫瘍は激しい痛みを伴うため、四肢にできた骨肉腫に対しては外科手術による断脚が第一選択になります。断脚のみで治療した場合の平均余命3~4ヶ月、術後に抗がん剤治療を行った場合は10~12ヶ月とされています。
手術と抗がん剤治療を行ったとしても1年生存率は約50%、2年生存率は約20%と非常に予後の悪いガンですが、小型犬~中型犬の骨肉腫は大型犬に比べて予後が良いとされています。
くう君の場合
今回は、そんな悪性度の高い骨肉腫と闘いながらも元気におもちゃで遊ぶ11歳のトイプードルの男のコ、くうくんを紹介します。
くうくんは2021年2月末頃から抱き上げるとキャンと鳴いたり、大好きなお散歩で立ち止まったりなんとなく元気のない様子で、その時は腰痛との診断で痛み止めを使ったそうですがあまり改善はありませんでした。ステロイドとビタミンB剤へ変更し経過を見ましたが少しずつ元気食欲がなくなり、4月からは神経疼痛を軽減するリリカへ薬を変更しました。
少し食欲が出てきたものの後ろ足が少しずつ麻痺し始めクロスしていまい、首から背中を触ると嫌がっていました。4/20にはトイレ以外はほぼ寝たきりになってしまい、かかりつけ医の紹介で二次診療の整形外科にて検査を行ったところヘルニアはグレード2なので投薬で改善するはずだが、肺に腫瘍があるとわかり腫瘍科を再受診しました。
手術がむずかしい骨肉腫に
CT検査を行うと肺ガンではなく骨肉腫の可能性が高く、すでに背骨が溶け始めていてガンは肋骨にも及んでいたそう。腫瘍科の先生には、
・外科手術での切除は難しく
・放射線治療は骨に絡みついている腫瘍は小さくなり一時的に楽になるかもしれないが、骨が折れてしまう可能性がある
・化学療法は副作用があり、治る見込みはない
・内臓への転移は見られないが、骨が溶ける時の痛みは相当な苦しみを伴う
・欧米では今の時点で安楽死を選択する人が多い
と言われたそうです。
痛みを緩和する治療をはじめる
くうくんの飼い主さんは苦痛を伴う治療ではなく内科的に痛みの軽減をしていくことにしました。くうくんがキュティアに来院されたのは骨肉腫と診断がついた翌日4/29でした。胸椎は溶けて変形し、突起が触れずくぼんでいました。体はとても疲れていました。
1~2週間に1回の鍼灸治療に加え、痛みと歩けないストレスからハァハァしたり頭が熱くなったりしていたので樋屋奇応丸を飲んでいただきました。治療2回目あたりからとても調子が良くなり、自分から動こうとしたり、後肢を支えてあげると歩くので車イスを作っていただきました。
車いすで元気いっぱいに!
車イスを使い始めてからさらに調子が良くなり、よく眠れるようになり、徐々に首を起こすようになり、お尻でオスワリもできるようになりました!
毎週毎週調子が良くなっていき、すっかり車イスを乗りこなしています。前肢だけで動き回るので前胸部や脇の下のコリがでてきたので7月からは整体も一緒に行っています。最近では、病気になってから見向きもしなかったおもちゃやボールで遊ぶようにもなりました!体が動くようになると気の巡りも良くなり、気持ちも明るく前向きになります。
回復力に皆でびっくり★
「腫瘍の痛みを緩和できたらと思って通っていたのに、まさかこんなに元気になるなんて!」と、とってもうれしそうな飼い主さん。
私達もくうちゃんの回復力には驚いています。背骨も肋骨も溶けているのに前肢で元気に動き回り笑顔のくうくん。動物の生命力は本当にすごいです。
この幸せな時間が少しでも長く続きますように。
それではハッピードックライフ♪
獣医師 佐々木彩子