Vol.150

幸せな黒柴19歳の老犬介護

公開日:2025.01.29  / 最終更新日:2025.01.30
幸せな黒柴19歳の老犬介護今回はご夫婦にあたたかく見守られながら元気に過ごしている黒柴の女のコ、もんちゃんを紹介したいと思います。もんちゃんは昨年10月に19歳のお誕生日を迎えました!そして19歳になった今も食欲があり毛はフサフサで毛艶も良く、自分の足で歩いているのです!

鍼灸治療を始めたきっかけは

もともと関節が弱かったけれど

もんちゃんが初めてキュティア老犬クリニックに来院したのは16歳の頃。7歳になったシニアの入り口頃から関節が弱くなり、後肢が開いた状態(いわゆるガニ股)で歩いていたそうです。初診時は16歳にしては毛もツヤツヤで肉づきも良好!食欲に時々ムラがあるものの夜はぐっすりと眠れているようでした。

しかし、腰部に圧痛があり、腰は下がってしまっていて、脉を診ると、ものすごく沈んでいました。これは「腎」の疲れをあらわしています。

腎の疲れの他に脾胃の弱りもあったのでそちらのケアも一緒に行っていきました。皮膚の痒みがあったのでアレルギーを考慮してトッピングにラム肉を与えていたそうなのですが、ラムは体を温める作用が強いため、季節が梅雨だったこともあり腎を元気にしてくれて老化予防にも良い豚肉をトッピングしていただくようお話しをしました。

長引くヒートによる疲れと貧血

もんちゃんは避妊手術をしていないのでヒート(発情)がきます。犬のヒートは発情前期に陰部から出血が見られ、1週間から長い場合2・3週間続くこともあります。犬のヒートは人間の生理とメカニズムが異なるので、避妊手術をしなければ高齢になっても続きます。

17歳を迎えた後のヒートからだらだらと出血が長引くようになりました。ヒート中は食欲が落ちてしまうので体重も2キロ減ってしまいました。少量ずつでも出血が続いていると貧血を起こしてしまうので、気と血を補う漢方薬を飲んでいただきました。

出血が完全に止まるまでに2ヶ月以上かかりました。発情出血の異常があった場合、ヒート後に子宮蓄膿症などの子宮の病気にかかりやすいため、かかりつけ医でエコーでチェックしていただくようにお願いをしました。

翌年18歳のヒートの時も出血が2ヶ月以上続きました。食欲にムラがあり、漢方薬を飲ませるのが難しくなってきたため、鍼灸治療に加えてプラセンタの注射を2週間に1回のペースで行いました。プラセンタ注射をすると元気になり、食欲も改善し、ドライフードも少し食べられるようになりました。

毎年年始からヒートが始まり食欲が落ちたりするのですが、今年はまだその兆候が見られません。ですが、ヒートに備えて今年は早めにプラセンタの注射もスタートしています。

認知症による変化は少しずつ

16歳の時は少し怒りっぽくなったり、ウロウロと歩き回ったりすることはありましたが、外でも元気に歩き、時々走ったりもしていたもんちゃん。イライラして吠えてしまう時には抱っこしてなだめていると鳴きやみました。

夜ごはんは自分で食べてくるのですが、朝ごはんは自分から食べてくれないことも多く、手から食べさせたり、摂取量が足りない時にはリキッドタイプの総合栄養食を飲ませたりして体重がなるべく減らないように工夫されていました。また食欲がない時や便の出が悪い時は胃腸の働きを良くする漢方薬を併用した時もありました。

夜鳴きのはじまり

18歳になる頃からは夜鳴きも始まりました。一時は夜鳴きの軽減のために漢方薬を飲ませたり、落ち着かせる薬を飲ませたりしている時期もありましたが、もんちゃんの場合はひどい夜鳴きがずっと続いてしまうことはありませんでした。

年齢と共に興奮がどんどんひどくなってしまうこともあるのですが、もんちゃんは16歳の時から体調が安定していてもずっと2週間に一度の鍼灸治療と整体マッサージを続けてきているのが大きいと感じています。

何事も工夫次第!マイペースな老犬介護

老犬介護用の手製歩行補助品足が衰えて転ぶ回数が増えてきて、そろそろ車イスの導入を検討してみてもいいかもと試しにレンタルで使ってみていただいたことがありました。しかし、洋服も嫌いなもんちゃんは「何これ!!」と乗車拒否。

自分の力で歩かせるためにどうしたらよいか考え、もたれかかりながらクルクルと徘徊できるようにお手製のサンドバックを作っていただきました。最初はペットシーツのパッケージをいくつかつなぎ合わせたものを支柱にしていたのですが、だんだんもたれかかる体重が重くなりずれてしまうので、今は家電の周りに布団を巻いてぶつかっても痛くないようにしているそうです。

日々の変化を受け止める

夜中に起きてしまい、水を飲ませたり、トイレにつれていったりしても寝ない時は少しの間ここで歩かせると寝てくれるようです。

暖かい時間にお庭で歩かせて、そのついでに追いかけながら棒灸をしたり、棒灸ができない日は小豆カイロであたためたりもしていただいています。

認知症になるとできなくなることが少しずつ増えていったり、日々体調も変化していきますが、それを受け止めてご夫婦で相談されてもんちゃんが楽に過ごせるようにいつも考えてくださっています。

おかげで以前よりも食欲も安定していて、自分でごはんも食べていて元気に過ごしています!この調子でマイペースに一日一日を幸せに過ごしていきましょう!

それではハッピードックライフ♪

キュティア老犬クリニック
獣医師 佐々木 彩子
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