胃腸が弱く食べムラも激しく、様々な持病を持ちながらも今年3月で19歳になるトイプードルのwishくんを紹介したいと思います。
12歳は犬の厄年?
犬は7歳からシニア犬と言われていますが、実際は12歳前後で様々な体の変化が出てくることが多いと感じています。
急性肝炎で危険な状態に
若い頃から胃腸が弱く嘔吐することも多く、慢性膵炎のような症状や胆泥の貯留もあり食事のムラがとにかく激しかったwishくん。
2019年3月、12歳になったころ急激に肝臓が悪くなってしまいました。血液検査の数値は振り切れて測れないほど高く、黄疸も出ていました。治療をして数値が測れるようになりましたが、それでもまだ正常値の10倍以上の高い値でステロイド治療をはじめましょうとかかりつけ医に言われ、何か他にもできることはないかとキュティアに来院されました。
初診時、脉は無力に近く、ものすごく疲れているのに体は力が入ってこわばっていて毛はツヤがなくゴワゴワしていました。被毛も「気」で覆われているので体調のバロメーターになります。気が不足しているとツヤがなくなり、かたくなります。
「肝」は熱をもちやすく、気を上半身(頭)の方へあげてしまうため、頭が熱く足先は冷えているのぼせの症状も出ていたのでお灸で気を下ろすところからはじめました。鍼灸治療に加えて、プラセンタやホモトキシコロジーの注射も行いました。自宅でも下半身を中心に棒灸であたためていただき、リラックスのマッサージ方法もお伝えしてやっていただきました。
反応は良好
翌週は数値も少し下がりはじめ、脉も初診時より力強くなりました。お家でのマッサージや棒灸が大好きなようで、お家ケアも積極的に行っていただきました。2週間後には少しずつ食欲も改善し始めて顔つきも良くなり、ステロイド剤も減量してもらえました。好き嫌いがとても多いのですがマコモクッキーは大好きでよく食べてくれました。
その後は2~3週間おきに鍼灸治療を継続し、1日おきに飲んでいたステロイド剤も2か月後に終了になりました。ステロイド剤をやめて一時肝臓の数値が高くなりましたが漢方薬やマコモを飲んで再び下がり、治療間隔も1か月おきにしました。
てんかん発作を起こすように

同居犬が亡くなったストレス
翌年の春に兄弟犬が亡くなり、体調は悪くはないけれどなんとなく元気がないwishくん。再び吐く回数が増えてしまい、GW明けにてんかん発作が起きてしまいました。仲の良かった同居犬がいなくなるという精神的ストレスは肝の不調をもたらします。元々肝臓が疲れていたwishくん、それに加えて春は肝の巡りが悪くなりやすい季節です。そこに大きなストレスが加わったことで肝の疏泄がうまく働かなくなり、てんかん発作が起きてしまったのです。
思うように発作のコントロールができず・・・
鍼灸治療でてんかん発作が全く出なくなったり、回数がかなり少なくなる犬も多いのですが、wishくんは発作のコントロールが難しく、しばらくでない期間もあれば、飼い主さんが仕事で帰りが遅かった日の翌日に出たり、気圧の変動で発作が出てしまうこともありました。
気圧変動による不調
気圧の変動も肝の疏泄がうまく働かなくなる要因の一つです。気圧が下がることで肝の気が逆流し、頭に上昇すると発作が起きます。胃の気が逆流すると嘔吐してしまいます。また、肺の気が逆流すると咳が出ます。その犬の弱い臓腑や疲れている臓腑の不調が起こるのです。wishくんの場合は気圧が変動する時に嘔吐すること多かったようです。
何度も病気の山を乗り越えて
アップダウンを繰り返しながらも
来院当初は食事のムラが激しく、お肉など人の食べるものはいくつか自分から食べてくれるものもありましたが、フードは強制的に口に入れて食べさせている状態でした。根気よく鍼灸治療を続けていたかいもあり、15歳になる頃からは自分からフードもよく食べるようになりました。毛も薄くやせていたのですが、どんどん毛も生えて筋肉も増えました! 発作をゼロにすることは難しかったのですが、頻度は少なくなり、発作の継続時間を短くするお手伝いはできていたのではないかと思います。
18歳半頃までは比較的てんかん発作や嘔吐のコントロールができていて最近までは自分の足で歩けていたのですが、この冬に転ぶ頻度が多くなってきてしまいました。また昼夜逆転もするようになってきてしまったため、車イスを使って日中の活動量を上げてみてもらいました。
年明けから突然の体調不良
お正月明けから再び下痢や嘔吐などの膵炎の症状が出てしまいました。昨年から激しい寒暖差と気圧変動が続いていたためハイシニア犬にはとても厳しい天候でした。ハイシニア犬でなくてもお腹の調子が悪いシニア犬が続出していました。
下痢がなかなか治らず、胃腸が疲れて「脾気」が弱り、肉球から出血したり、血尿がでることもありました。普段は脾気が血管の外に血が漏れ出ないようにとどめておいてくれているのですが、気が消耗しているとあちこちから出血しやすくなってしまうのです。
何度も病気の山を乗り越えてきたwishくんですが、2月の頭に天国へ旅立ちました。
本当に色々な病気を抱えながら19歳目前までよく頑張りました。
ご冥福をお祈りいたします。
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